腎細胞癌に対する分子標的治療法
分子標的治療
分子標的治療薬とは
分子標的治療の作用機序
分子標的治療薬の投与成績
ソラフェニブ
前治療に抵抗性の転移性淡明型腎癌903例を無作為に2群にわけ、ソラフェニブと偽薬〈効果のない薬〉を投与したところ、無増悪生存期間は5.5ヶ月と2.8ヶ月であり、ソラフェニブを投与した群で延長を認めました(Escudier B et al, N Engl J Med, 356, 2007)。
スニチニブ
無治療の転移性腎癌(淡明型細胞癌)750例を対象に無作為比較対照試験として、スニチニブあるいはIFN-αの投与を行ったところ、無増悪生存期間は11ヶ月と5ヶ月であり、有意にスニチニブで延長を認めました (Motzer RJ et al, N Engl J Med, 356, 2007)。
テムシロリムス
無治療の高リスク転移性腎癌626例を対象に無作為比較対照試験として、テムシロリムス、IFN-αあるいは両者の併用投与を行ったところ、全生存期間は10.9ヶ月、7.3ヶ月、8.4ヶ月であり、有意にテムシロリムスで延長を認めました (Hudes G et al, N Engl J Med, 356, 2007)。
エベロリムス:既治療の転移性腎癌(淡明型細胞癌)410例を対象に無作為比較対照試験として、エベロリムスあるいは偽薬の投与を行ったところ、無増悪生存期間は4.0ヶ月と1.9ヶ月であり、有意にエベロリムスで延長を認めました (Motzer RJ et al, Lancet, 372, 2008)。
アキシチニブ
既治療の転移性腎癌(淡明型細胞癌)723例を対象に無作為比較対照試験として、アキシチニブあるいはソラフェニブの投与を行ったところ、無増悪生存期間は6.7ヶ月と4.7ヶ月であり、有意にアキシチニブで延長を認めました Rini BI et al, Lancet, 378, 2011)。
パゾパニブ
無治療の転移性腎癌(淡明型細胞癌)435例を対象に無作為比較対照試験として、パゾパニブあるいは偽薬の投与を行ったところ、無増悪生存期間は9.2ヶ月と4.2ヶ月であり、有意にパゾパニブで延長を認めました (Sternberg CN et al, J Clin Oncol, 28, 2010)。
ニボルマブ
既治療の転移性腎癌(淡明型細胞癌)821例を対象に無作為比較対照試験として、ニボルマブあるいはエベロリムスの投与を行ったところ、全生存期間は25.0ヶ月と19.6ヶ月であり、有意にニボルマブで延長を認めました (Motzer RJ et al, N Engl J Med, 373, 2015)。
副作用
注意点
- 腫瘍の増殖因子を阻害する作用のある薬です。癌細胞を殺す作用は強くはないので、有効率は低いものの、腫瘍の進展を食い止め、無増悪生存期間を延長させることが最大の特徴です。薬が効いていても、腫瘍径に変化が見られないことがあります。
- 「抗癌剤ではないので副作用が少ない薬」というのは間違った認識です。副作用として手足の皮膚反応などがあり、痛みを伴い場合によっては歩行困難を来たす場合もあります。また、海外のデータは豊富ですが、日本人の副作用のデータはまだ蓄積中の状態です。国内での使用経験から、副作用を少なくする投与法なども検討され始めていますが、現時点ではなお投薬に際し注意深く使用する必要があります。