特徴的な治療法

骨盤臓器脱に対する新しい治療法

骨盤臓器脱とは?

膀胱・子宮・直腸・腟などが腟口から脱出する状態を骨盤臓器脱と呼びます。子宮全摘手術後でも腟という袋が裏返しになったように下がることがあります。女性の骨盤底(内臓を支えている骨盤の底)の構造的弱点が背景にあり、出産・加齢などにより骨盤底の筋肉(骨盤底筋)が緩み、内蔵を支えている靭帯や筋肉が損傷されることが原因と考えられています。米国で女性が80歳まで生きると、約1割がこの種の状況で手術を受けると報告されているほど頻度の高い疾患で、年齢と共に進行が予想されます。

ロボット支援下仙骨膣固定術(RASC:Robot-assisted sacrocolpopexy)
骨盤臓器脱は症状が主な病気であり、命にかかわることがないため、患者さんが希望された場合に手術の適応となります。ロボット支援下仙骨腟固定術(RASC, 別名RSC)は、骨盤臓器脱に対する新し手術で、2020年から保険適応となった骨盤臓器脱の新しい治療法です。臓器が出ていることによる不快感に加えて、排尿困難、残尿感、頻尿、排便困難等の症状に対しても改善が期待されます。 当院はRASCプロクターが在籍し、安全性と治療効果が両立されたRASC治療に取り組んでおります。プロクターとは、RASC手術の指導・教育を行う医師の資格です。

RASC手術は、腹部に通常5箇所の小さな穴(手術用ポート)をあけ、そこから腹腔鏡やロボットアームに接続した手術器具等を使用し、手術を行います(図1)。

図1 下腹部に穴をあける位置

経腹的な操作を行うことで、術後メッシュ露出や性交痛、手術中の大量出血等の合併症が、従来の経腟メッシュ手術(TVM)より少ないと考えられています。実際の手術手順は、以下の通りです(図2)。

図2 骨盤の解剖とメッシュ挿入・固定位置

① 手術用ポートから腹腔鏡とロボットアームに接続した手術器具を挿入し、腹腔鏡の映像をモニターで見ながら手術を進めます。

② 子宮頸部で子宮を部分的に切除します(最終的に体外へ取り出します)。

③ 膣後壁と直腸の間を剥離し、メッシュと膣後壁を固定します。

④ 膣前壁と膀胱の間を剥離し、メッシュと膣前壁を固定します。

⑤ メッシュで固定された膣を引き上げ、仙骨に固定します。

⑥ 出血などがないことを確認した後に、ポートの創を縫合します。

当院では、従来の経腟メッシュ手術・腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC:Laparoscopic sacrocolpopexy)に加えて、新しいRASC手術にも積極的に取り組んでおり、患者さまにあった治療法を選択しております。