患者の皆様へ

尿失禁外来

水曜日 午後 / 担当医:篠島 利明

尿失禁とは

尿失禁とは自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうことです。尿失禁の悩みは仕事,家事,社会活動のみならず、心の健康にも影響することが示されていますが、恥ずかしがって我慢している方がとても多いと考えられます。泌尿器科では尿失禁の状態や原因を診断して適切な治療をおこなっています。

尿失禁の種類と治療法

専門外来では患者さんへの生活指導、骨盤底筋体操の指導は尿失禁関連を専門とする看護師が行なっております。
(1) 腹圧性尿失禁

お腹に圧力が加わったときにおきる尿失禁を腹圧性尿失禁といいます。咳などによる腹圧の上昇や階段の昇り降りなどの動作がきっかけとなります。若年女性の代表的な尿失禁ですが、前立腺全摘除術後の男性にもみられます。

治療法
生活指導
便秘の改善、過度のコーヒーやアルコール摂取、水分摂取をひかえること、減量など。
骨盤底筋体操
DVDやパンフレットにより体操の方法をお示しします。必要であれば専門看護師が正しくできているかを確認いたします。
上記で効果が不十分な場合は下記の手術が検討されます。

TVT手術(女性のみ)
尿道や膀胱を釣り上げて尿失禁防止するのではなく、尿道の後ろにテープを回し、腹圧がかかった時に尿道が動くのを防ぐ手術です。下腹部の左右に1センチほどの小さな切開を入れ、メッシュ状のテープを挿入します。
人工尿道括約筋
埋め込み手術
尿道にシリコン樹脂でできたカフを巻きつけ、尿道括約筋の代わりに排尿を制御します。男性の前立腺手術に合併した尿失禁に対して、海外では標準治療として普及しており、前立腺全摘術後患者の約3%がこの手術を受けているというデータもあります。日本では2012年より保険収載されていますが、現在までに人工括約筋埋め込み術を受けたのは、この手術を必要としている患者さんの15%程度しかいないと考えられています。手術の浸透率が海外と比較して低い理由として、尿失禁に悩む患者さん、また前立腺手術をおこなった医師共に、この手術の認知や理解が十分でないことも挙げられています。当科では2013年以降コンスタントに本手術をおこなっており、多くの患者さんから術後に満足の声をいただいております。
人工尿道括約筋(シリコン製)の外観

人工尿道括約筋(シリコン製)の外観

人工尿道括約筋の手術による埋め込み

人工尿道括約筋の手術による埋め込み

(2) 切迫性尿失禁

前ぶれもなく尿がしたくなり、その高まりが急なため、トイレまで間に合わない尿失禁を切迫性尿失禁といいます。男女を問わず高齢の方に多くみられます。

治療法
薬物療法
生活指導などの保存療法と共に、薬物療法が有効です。膀胱の過敏性を取り除くことを目的として抗コリン薬などを内服していただきます。
仙骨神経電気刺激
装置植え込み手術
膀胱容量が小さく薬物療法が無効な患者さんに、2017年9月より仙骨(お尻の骨)にある膀胱の神経に対して、臀部に埋め込んだペースメーカーから直接電気刺激を行なう手術が保険収載され、当院でも2018年3月より開始しました。
仙骨神経電気刺激
装置植え込み手術

膀胱の神経に持続的に電気刺激を与えることによって、切迫性失禁を含む過活動膀胱の症状の改善を図る治療方法です。

(3) 混合性尿失禁
(1)と(2)の両方を認めるもで、女性の尿失禁の約半数を占めます。
(4) その他
尿が膀胱容量を超え、ためきれず溢れ出てしまう尿失禁を溢流性尿失禁と呼んでいます。進行した前立腺肥大症の男性にしばしばみられます。また泌尿器科的な排尿機能の異常がないにもかかわらず、身体運動障害の低下や痴呆が原因でおこる尿失禁を機能的尿失禁と呼んでいます。

代表的な尿失禁の検査

  • 排尿日誌
    専用のノートに2日間程度、トイレに行った時刻と1回に出た尿の量、尿失禁があった時刻やパッドを交換した時刻を記載してもらいます。
  • 膣診・ストレステスト(女性のみ)
    診察台で膀胱や子宮が下がっていないか、また咳を繰り返し行なって尿失禁が再現されるかを確認します。
  • パッドテスト
    尿取りパッドの乾燥重量を測定後、装着します。水分を摂取した後、歩行・階段昇降、またその他の尿失禁を誘発する動作を繰り返し行ないます。検査終了後にパッドをはずし、重量の増加を測定します。2~5グラムは軽症、5~10グラムは中等症、10~50グラムは重症、50グラム以上は極めて高度の尿失禁と判定します。
  • 尿流動態検査(ウロダイナミクス検査)
    上記の検査でも尿失禁の種類が判断出来なかったり、手術適応に迷う場合に行なう検査です。膀胱や尿道機能を正確に把握することができます。
※性器脱(子宮脱、膀胱瘤、直腸脱)
性器脱は、骨盤底の緩みから、膣から子宮が出てきたり(子宮脱)、膣の壁と一緒に膀胱が下がってきたり(膀胱瘤)、直腸が膣側に突出する(直腸脱)といった一種のヘルニアです。入浴時に触れる、歩行時や排便時の下垂感という症状が多く、尿失禁や排尿・排便障害をしばしば伴い、程度により治療の必要となる場合があります。当科ではTVM法(Tension-free Vaginal Mesh)という緩んだ骨盤底の靱帯や筋膜をメッシュを用いて補強する方法を主に行なっています。子宮摘出術と比較して傷の痛みが少なく、子宮温存が可能、再発が少ないなどが利点です。