腎移植外来
1.腎不全の治療法は?
進行した腎不全の治療法には大きく分けて2つの治療法があります。ひとつは人工的に、腎臓の働きを補う『透析』、もうひとつは、他の人から腎臓そのものを移植する『腎移植』があります。『透析』は週2-3回通院して、血液の浄化装置で3-4時間の治療を行う血液透析と1日3-4回、お腹に入れたチューブを使って腹腔内の透析液の交換を行う腹膜透析とがあります。『腎移植』は働きを失った腎臓にかわり、腎臓提供者(ドナー)より提供された健康な腎臓にその働きを代行してもらう方法です。透析は腎臓の機能のすべてを代替することはできず、時間的、社会的制約も大きいです。それに対し腎移植は現時点で腎不全の根本的治療に最も近い治療法といえます。移植後は生涯を通じて免疫抑制剤の内服を要しますが、透析療法に比べ、生活の質が大きく改善するのみならず、生存率も上昇するという報告もあります。
腎移植には大きく分けて『生体腎移植』と『献腎移植』とがあります。生体腎移植は、ドナーから2つある腎臓のうちの1つを頂いて、患者さんに移植する方法です。一方、献腎移植は、脳死または心停止の方から腎臓の提供があった場合に、その腎臓を移植する方法です。
2.移植術後の予定
■患者さん(レシピエント)の場合
手術後2~3日は安静を保つ必要がありますが、順調に行けば、翌日から食事が出来るようになります。最終的に手術後3週前後で退院となります。その後は1~2週に1回の外来通院を1-3ヶ月程度続けます。当院で手術をうけた患者さんの移植腎生着率(移植した腎臓がだめにならずはたらいている確率)はきわめて高いですが、腎移植後には移植した腎臓に対する拒絶反応や、免疫抑制剤を内服することによる感染症がおこることがあるため、安定しても4~8週に一度の外来通院で経過を見ていく必要があります。当院では移植した腎臓の状態をみるため、術後3ヶ月・1年目・5年目に腎生検(針をさして移植した腎臓の組織をとり、顕微鏡で見る検査)を行っています。
■生体ドナーの場合
生体腎移植ではドナーに対する安全性を最重視しなければなりませんが、腎臓を摘出する際に腎機能に悪影響を与えず、しかもドナーの術後の疼痛を最小限とし、入院期間を短縮する努力が進められています。当院では豊富な腹腔鏡手術の経験を基に世界的に主流となっている腹腔鏡下腎摘出術をドナーの方の手術にも取り入れています。そのため、術後翌日には食事をしたり歩いたり出来るようになり、術後5日前後で退院可能となります。退院後も外来にて腎機能をフォローしていきます。
移植というと大変な手術だと思われるかもしれませんが、全世界で年間20000件以上、日本でも年間約1600例行われています。詳しくは、外来に話を聞きにきていただければと思います。近年では血液型が同じでなくても移植は可能となり、血液透析や腹膜透析を経ずに腎移植を受けるpreemptive(先行的)腎移植もさかんに行われております。
詳しくは当教室にて作成した腎移植パンフレット『いのちときずな』をご覧ください。
腎移植希望、受診相談などお問い合わせの際には、病院代表電話(03-3353-1211)より 移植コーディネーターまでご連絡ください。