男子の精巣を守る!

イラスト1

 男子の陰嚢の中には、「精巣(睾丸とも呼びます)」という男性ホルモンや精子を作る大変重要な臓器があります。将来ある小児や若年成人の世代にはこの精巣に「精巣捻転症」や「精巣腫瘍」という病気が発症しやすいことがわかっています。どちらの病気も診断が遅れると精巣を失ったりまたは機能を悪くしたり、体への負担の大きい治療が必要になったりします。一方、いずれも陰部の病気なので、ご本人が自覚していてもその“恥ずかしさ”からなかなかご家族や周囲に相談できず病院への受診が遅れてしまうことが少なくありません。
 学童期以降の男子とそのご家族にはぜひこれらの病気の存在と早期受診の重要性をご理解いただきたいと思います。

精巣捻転症

 もし、男子が陰嚢に急な痛みや腫れを感じたら一刻も早く泌尿器科または外科があり緊急手術が可能な病院を受診してください。
 精巣には、血液が流れる血管(動脈、静脈)や精子が通る精管がつながっていて精索という束になっています。「精巣捻転症」は、この精索が急に“雑巾を絞ったように”捻れてしまうことによって精巣に血液が流れなくなってしまう病気です(図-1)。治療が遅れると精巣が死んでしまい、将来の不妊症の確率が高くなります。この病気は、精巣が急速に発育する10〜15歳頃の思春期と生後間もない新生児期に発症しやすく、25歳以下の男性では10万人あたり4.5〜25人の発症率とされています。
イラスト2  思春期の精巣捻転症は、突然、陰嚢の激しい痛みと大きく腫れてくることで発症し、お腹の痛みや吐き気をともなうことも少なくありません。右側より左側に、夜間から早朝の時間帯に、冬などの寒冷期に多いことが特徴です。また、陰部の打撲をきっかけに発症することもあります。
 急に陰嚢が痛くなったり腫れてくる病気は他にもありますが、少しでも精巣捻転症の可能性がある場合は緊急手術が必要です。陰嚢を切開して精巣の捻れを戻し、今後捻れないように陰嚢の中に糸で縫合して固定します。捻れの程度にもよりますが、一般的には発症から6〜8時間以内に捻れを戻さないと精巣は回復しません。手術が遅れ、捻れを戻しても血流が回復しなければ精巣を摘出しなければなりません。血流が回復して精巣を残せた場合でも、手術までに時間がかかっていると後で精巣が小さく萎縮して機能が悪くなってしまうことがあります。また、反対側の精巣も体質的に捻れやすいため同時に陰嚢内に固定します。
 この病気の大きな問題点は、病気の部位が陰部なので男子本人が気づいていても“恥ずかしさ”からなかなかご家族や学校関係者に相談できず病院への受診が遅くなってしまうことです。また、最初に受診する病院で緊急手術ができないと、別の病院への紹介や手続きで手術までに無駄な時間を費やして治療が遅れてしまうこともあります。その結果として、精巣を摘出したり、萎縮したりすることがいまだに多いのです。
 男子の精巣を守るには、まずこの「精巣捻転症」という病気の存在を男子とそのご家族が知っていることが必要です。普段からこの病気の緊急性についてよく話し合っておいてください。そして、自宅や学校の近くで精巣捻転症の緊急手術ができる病院も調べておいてください。もし、男子が急に陰嚢が痛くなったり腫れてくるようなことがあったら、恥ずかしがらず隠さずに自宅ではご家族に学校では先生にすぐに相談して、その緊急手術が可能な病院を早急に受診してください(図-2)。また、お腹に食べ物が溜っていると麻酔に関わる危険性から早急な手術ができない場合があるため、発症が疑われた時はすぐに治療ができるように飲んだり食べたりしないで受診することが重要です。

精巣腫瘍

 思春期からの精巣の重要な病気に「精巣腫瘍」もあります。この病気は精巣に発生する腫瘍で、ほとんどが悪性の「がん」です。男性10万人あたり1〜2人の発症率とまれな病気ですが、15〜30歳代の若年男性では最も多い腫瘍です。また、早い時期から転移(がん細胞が他の臓器に広がること)を起こしやすい病気です。
 精巣腫瘍は、痛みはほとんどともなわず、入浴時などに精巣が大きく腫れていることで気づかれます。早く診断されれば腫瘍の発生した片方の精巣を手術で摘出するだけで治療が済むことがあります。一方、診断が遅れ転移をきたすと生命の危険性が高くなるとともに、抗がん剤治療、放射線治療、腹部のリンパ節を摘出する手術などの追加治療が必要になります。このような追加治療は副作用をともなうことが多く、脱毛、骨髄・腎臓の機能低下だけではなく、反対側の精巣にも影響して精子を作る機能や射精機能の障害を引き起こします。
イラスト3  この病気も陰部に発生するので、その“恥ずかしさ”と痛みがないことから病院への受診が数ヵ月以上も遅れ、結果的に病状が進行してしまっていることが少なくありません。身体への負担がより少ない治療で治すためにも早期の診断が何よりも重要です。少しでも精巣の大きさに左右の違いを感じたり、徐々に大きくなっていることに気づいた場合は、恥ずかしがらずになるべく早く泌尿器科のある病院を受診してください。

文責:浅沼 宏

図-1:精巣捻転症

精巣捻転症

図-2:発症から治療までの流れ

発症から治療までの流れ

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