業績紹介

論文紹介

慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.35

Independent Predictors for Bladder Outcomes after Treatment of Intravesical Recurrence following Radical Nephroureterectomy in Patients with Primary Upper Tract Urothelial Carcinoma.

Tanaka N, Kikuchi E, Kanao K, Matsumoto K, Shirotake S, Kobayashi H, Miyazaki Y, Ide H, Obata J, Hoshino K, Hayakawa N, Hagiwara M, Kosaka T, Oyama M, Miyajima A, Momma T, Nakagawa K, Jinzaki M, Hasegawa S, Nakajima Y, Oya M.

Ann Surg Oncol. 2014 Mar 29. [Epub ahead of print]

目的

腎尿管全摘術後に膀胱内再発を認めた上部尿路上皮癌患者のその後の膀胱内再発・進展の予測因子を後ろ向きに検討した。

方法

慶應義塾大学病院及びその関連施設において腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者の内、膀胱内再発(<pT2)を認めた241例を解析の対象とした。初回膀胱内治療からの平均観察期間は33ヶ月であった。臨床病理組織学的因子とその後の膀胱内再発/進展の関係を統計学的に検討した。

結果

69例で膀胱内再発を認め、また経過中に13例では膀胱内進展(≥pT2)が確認された。1年/5年膀胱内再発率は31.0%/48.4%であり、また1年/5年膀胱内進展率は2.4%/8.0%であった。多変量解析の結果、初回膀胱内治療時の腫瘍数・pT1の有無がその後の膀胱内再発を予測する独立した危険因子であり、pT1・膀胱内CISの有無がその後の膀胱内進展を予測する独立した危険因子であった。

結論

腎尿管全摘術後の膀胱内再発/進展の予測因子はそれぞれ腫瘍数・pT1の有無/ pT1・膀胱内CISの有無であり、これらは膀胱内再発を認めた上部尿路上皮癌患者の最適な膀胱サーベイランス作成に寄与すると思われた。

文責 田中 伸之

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.34

Androgen deprivation therapy improves pneumoperitoneum time during laparoscopic radical prostatectomy in Japanese patients with enlarged prostates

Takeda T, Miyajima A, Kaneko G, Kikuchi E, Nakagawa K, Oya M

Asian J Endosc Surg. 2014 Jan 14. doi: 10.1111/ases. 12084. [Epub ahead of print]

目的

術前内分泌療法(NHT)が腹腔鏡下前立腺全摘除術(LRP)の手術成績に与える影響について検討した。

患者と方法

2006年から2011年までに、限局性前立腺癌に対して施行したLRPのうち経直腸的超音波検査にて術前前立腺体積を計測した286例を対象とした。NHTの施行の有無がLRPの気腹時間、出血量に影響を与えるか否かを検討した。

結果

286例のうち80例にNHTを施行し、NHT施行期間は5.2±0.2か月であった。全286例の検討では多変量解析にてNHT施行の有無は気腹時間延長や出血の独立した予測因子ではなかった。NHT施行前の前立腺体積50ml以上の57例の検討では、NHTの未施行は気腹時間延長に寄与する独立した予測因子であった(p=0.011)。NHT施行群(26例)の気腹時間(164.5±39.0分)はNHT未施行群(31例、184.0±36.7分)に比して有意に短かった(p=0.048)。なお、NHT施行群の前立腺体積は63.7mlから42.1mlと33.9%の減少を認めた。

結論

前立腺体積50ml以上の症例では、NHTによる前立腺のvolume reductionによってLRPの気腹時間を短縮できる可能性が示唆された。

文責 武田 利和

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Periprostatic fat area is an independent factor that prolonged operative time in laparoscopic radical prostatectomy.

Kaneko G, Miyajima A, Yuge K, Hasegawa M, Takeda T, Jinzaki M, Kikuchi E, Nakagawa K, Oya M.

Urology 2013 Dec; 82(6): 1304-9

目的

これまでに我々は、腹腔鏡下前立腺全摘術を1)ポート挿入〜閉鎖リンパ節郭清、2)内骨盤筋膜切開、3)Dorsal vein complex結紮、4)膀胱頸部剥離、5)精管・精嚢剥離切断、6)直腸前立腺間剥離、7)膀胱尿道吻合の7 stepに分けた検討を施行し、BMIは大部分のstep(1、3、4、5、6)の所要時間を、また前立腺重量は大きな前立腺により操作スペースが狭まるstep(2、5、6)の所要時間を延長させることを明らかにした(Kaneko G, et al. Int J Urol. 2013)。近年、腹部手術成績を予測する因子として、内臓脂肪がBMIより有用であると報告されているが、前立腺全摘術における内臓脂肪の影響は検討されていない。本検討では内臓脂肪を含めた患者側因子の何が腹腔鏡下前立腺全摘術の手術成績に影響を与えるか解明することを目的とした。

対象と方法

熟練した単一術者が施行し、術前CTで内臓脂肪が測定可能、かつ手術記録ビデオにて上述の各stepの所要時間が計測可能な116例を対象とした。術前4週間以内に撮影されたCTを用いて、総内臓脂肪量(臍レベル)、および前立腺周囲脂肪量(大腿骨頭レベル)を測定した。年齢、BMI、前立腺重量、レチウス腔面積(大腿骨頭レベルで恥骨、肛門挙筋、直腸に囲まれた範囲)、下腹部手術・複数回前立腺生検の既往、術前内分泌療法の有無、総内臓脂肪量、前立腺周囲脂肪量の各因子と手術成績の関連を検討した。

結果

多変量解析で前立腺周囲脂肪量(≥285mm2)と前立腺重量(≥35.0g)は、総手術時間(前立腺周囲脂肪量:P<0.001、Odds ratio(OR)=4.739、前立腺重量:P=0.032、OR=2.790、総内臓脂肪量:P=0.035、OR=2.708)、気腹時間(前立腺周囲脂肪量:P=0.002、OR=5.685、前立腺重量:P=0.011、OR=4.005)の延長を予測する独立因子であった。前立腺周囲脂肪量は、1)ポート挿入〜閉鎖リンパ節郭清、4)膀胱頸部剥離、5)精管・精嚢剥離切断、6)直腸前立腺間剥離のstepの所要時間を延長させる独立因子であった。
一方、前立腺重量は5)精管・精嚢剥離切断、6)直腸前立腺間剥離のstepの所要時間を延長させる独立因子であった。出血量、術後尿道カテーテル留置期間、術後在院期間、合併症、切除断端陽性率と内臓脂肪の間に有意な関連を認めなかった。

結語

前立腺周囲脂肪量は、総内臓脂肪量やBMIと比して、総手術時間の延長をより正確に予測する因子であった。手術を熟練した術者が施行した場合、前立腺周囲脂肪量が多い群と少ない群の安全性や切除断端陽性率に有意な差を認めなかった。

文責 金子 剛

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Surgical outcome of laparoscopic surgery including laparo-endoscopic single-site surgery for retroperitoneal paraganglioma compared with adrenal pheochromocytoma

Hattori S, Miyajima A, Hirasawa Y, Kikuchi E, Kurihara I, Miyashita K, Shibata H, Nakagawa K, Oya M.

J Endourol. 2014 Feb 5. [Epub ahead of print]

目的

当院における孤立性腹部傍神経節腫(paragnglioma: PGL)に対する腹腔鏡下摘除術(LAP-PGL)と褐色細胞腫(pheochromocytoma: PCC)に対する腹腔鏡下副腎摘除術(LAP-PCC)の手術成績及び安全性について比較検討した。

方法

当院で2001年1月より2013年3月までに施行した49例のPCCと9例のPGLを対象とした。多発症例、腹膜外アプローチで施行した症例は除外した。内22例(PCC中19例、PGL中3例)はLaparoendoscopic single-site(LESS) surgeryで施行された。全ての手術は2名の熟練した泌尿器腹腔鏡技術認定医により施行された。患者背景、周術期データについて検討を行った。

結果

患者背景は性別、年齢、BMI、腫瘍径、術前血中・尿中ホルモン値を含めて両群に差を認めなかった。手術時間はPGL群で有意に長かった(149.4 ± 56.5 分vs 189.8 ± 44.9 分、p=0.019)。PCC群の内LESSで施行された1症例で術中追加ポートが必要であり、PGL群の1例で開腹手術への移行と術中輸血を必要とした。単変量解析、及び多変量解析に於いて腫瘍径≥50mm、及び腫瘍の局在(PGL)が手術時間を有意に延長する因子であった。術中低血圧(SBP≤80mmHg)はPGL群で有意に多く発生した(15例vs8例、p=0.002)が、いずれも薬物療法に反応した。PCC群の1例、PGL群 の2例でClavien-Grade2以上の術後合併症を認めた(p=0.012)。

結論

本検討に於いてLAP-PGLはLAP-PCCに比べ手術時間が長く、術中低血圧の頻度が高く、術後合併症の頻度もPGL群で多かった。PGLに対する腹腔鏡下手術に臨む際はより慎重な検討が必要と考えられた。

文責 服部 盛也

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Long term follow-up in patients with initially diagnosed low grade Ta non-muscle invasive bladder tumors: tumor recurrence and worsening progression.

Kobayashi H, Kikuchi E, Mikami S, Maeda T, Tanaka N, Miyajima A, Nakagawa K, Oya M.

BMC Urol. 2014 Jan 8;14:5. doi: 10.1186/1471-2490-14-5. PMID: 2440064

背景及び目的

初発筋層非浸潤性膀胱癌のうち,G2腫瘍を2004年WHO grading systemに基づき再分類し長期的に再発や進展について検討した報告は少ない.今回我々は,当院における初発,Low grade Ta腫瘍における膀注療法の治療効果を検証するとともに,独自にWorsening Progression (WP)を定義し,再発やWPの傾向を分析することで長期フォローの必要性を評価することを目的とした.

対象・方法

過去25年間に当院で診断した初発,TaG1-2腫瘍198例を病理学的にLow / High gradeに再評価し,Low grade Ta腫瘍と分類した190例を対象とした.WPを(1)high grade Ta, T1,CISでの膀胱内再発,(2)上部尿路再発(UTR),(3)pT2以上の筋層浸潤と定義し,膀注療法が再発及びWPに与える影響を検証した.また,5年間無再発で経過した症例76例を対象に,その後の再発(Late recurrence),WP(Late WP)について検証し,Low grade Ta腫瘍の長期フォローの必要性を評価した.

結果

平均観察期間は101.5ヶ月であった.腫瘍の再発及びWPはそれぞれ82例(43.2%),21例(11.1%)に認められ,WPの内訳は(1)17例,(2)2例,(3)2例であった.多変量解析では多発腫瘍(p<0.001, HR:2.97),膀注療法未施行(p<0.001, HR:2.88)が再発の独立した危険因子であり,一方で多発腫瘍(p=0.001, HR:5.26)はWPにおいても唯一の独立した危険因子であった.

5年間無再発で経過した76例のうち11例(14.5%)がLate recurrenceを来し,9例は5-10年の間に定期的な膀胱鏡検査で再発を認め,2例は10年以上経過してから肉眼的血尿を契機に再発が発見された.Late recurrenceに対する有意なRisk factorは認めなかった.

結論

腫瘍の多発性は再発,WPのどちらに対しても独立した危険因子であった.5年間無再発で経過した初発Low grade Ta筋層非浸潤性膀胱癌であっても,その後一定の割合で再発が生じるため,10年程度の長期フォローが必要であると考えられた.

文責 小林 裕章

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.33

Metastatic Behavior of Upper Tract Urothelial Carcinoma After Radical Nephroureterectomy: Association with Primary Tumor Location.

Tanaka N, Kikuchi E, Kanao K, Matsumoto K, Kobayashi H, Ide H, Miyazaki Y, Obata J, Hoshino K, Shirotake S, Akita H, Kosaka T, Miyajima A, Momma T, Nakagawa K, Hasegawa S, Nakajima Y, Jinzaki M, Oya M.

Ann Surg Oncol. 2013 Nov 12. [Epub ahead of print]

目的

腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者における術後再発/転移形式並びにその予測因子を後ろ向きに検討した。

方法

慶應義塾大学病院及びその関連10施設において腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者733例を対象とした。平均観察期間は34ヶ月であった。臨床病理組織学的因子と再発/転移形式を統計学的に解析すると共に、腫瘍局在(腎盂・上部尿管・中部尿管・下部尿管)との関連も検討した。

結果

218症例で術後再発/転移を認め、その大部分が腎尿管全摘後3年以内であった。38.5%では遠隔転移のみ、17.4%では遠隔転移・局所再発、44.0%では局所再発のみが認められた。肺・肝・骨が遠隔転移の後発臓器であった。多変量解析の結果、病理学的因子に加えて骨盤内局所再発(P<0.001)・肺転移(P=0.003)が有意に腫瘍局在と関連し、下部/中部尿管腫瘍では骨盤内局所再発が、腎盂腫瘍では肺転移が独立した危険因子であった。

結論
腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者では、その腫瘍局在は再発/転移部位を予測における独立した危険因子であった。

文責 田中 伸之

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Patient characteristics and outcomes in metastatic upper tract urothelial carcinoma after radical nephroureterectomy: the experience of Japanese multi-institutions.

Tanaka N, Kikuchi E, Kanao K, Matsumoto K, Kobayashi H, Miyazaki Y, Ide H, Obata J, Hoshino K, Shirotake S, Hayakawa N, Kosaka T, Miyajima A, Momma T, Nakagawa K, Hasegawa S, Nakajima Y, Oya M.

BJU Int. 2013 Jul;112(2):E28-34. doi: 10.1111/bju.12133.

目的

腎尿管全摘術後の再発/転移性上部尿路上皮癌患者の患者背景を検討する共に、その予後予測因子を後ろ向きに検討した。

方法

慶應義塾大学病院及びその関連10施設において腎尿管全摘術後に再発/転移を認めた上部尿路上皮癌患者204例を対象とした。腎尿管全摘術から再発/転移までの平均期間は15.0ヶ月であった。

結果

転移/再発診断後の平均観察期間8.1ヶ月の内、癌死は165例に認められた。全204例における1年、3年癌特異的生存率はそれぞれ40.2%、9.7%であった。化学療法は132例で施行されており、その内116例(87.9%)ではシスプラチン併用化学療法が施行されていた。化学療法施行132例の1年、3年癌特異的生存率はそれぞれ54.4%、13.3%であった。化学療法施行群を対象とした多変量解析ではPerformance Status (PS)、肝転移の有無、多発転移の有無が癌特異的生存と関係する独立した危険因子であった。

結論

腎尿管全摘術後の再発/転移性上部尿路上皮癌患者では、化学療法施行に関わらず、大部分の症例で3年以内の癌死が認められた。化学療法施行群における多変量解析の結果、PS・肝転移・多発転移の有無が独立した予後予測因子であった。

文責 田中 伸之

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The predictive value of positive urine cytology for outcomes following radical nephroureterectomy in patients with primary upper tract urothelial carcinoma: A multi-institutional study.

Tanaka N, Kikuchi E, Kanao K, Matsumoto K, Shirotake S, Kobayashi H, Miyazaki Y, Ide H, Obata J, Hoshino K, Hayakawa N, Kosaka T, Oyama M, Miyajima A, Momma T, Nakagawa K, Jinzaki M, Nakajima Y, Oya M.

Urol Oncol. 2013 Sep 18. doi:pii: S1078-1439(13)00290-1. 10.1016/j.urolonc.2013.07.003. [Epub ahead of print]

目的

腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者における術前尿細胞診陽性の予後予測マーカーとしての有用性を後ろ向きに検討した。

方法

慶應義塾大学病院及びその関連9施設において腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者(pTa-4N0M0)の内、術前尿細胞診検査が施行された474例を対象とした。平均観察期間は35月であった。臨床病理組織学的因子に加え術前尿細胞診陽性と予後(非膀胱再発・膀胱内再発・癌特異的生存率)を統計学的に検討した。

結果

術前尿細胞診陽性は184例(38.8%)に認められ、単変量解析では非膀胱再発・膀胱内再発・癌特異的生存率の内、膀胱内再発のみが有意に尿細胞診陽性と関連した(P=0.024)。多変量解析の結果、男性(Hazard ratio [HR] = 1.74, 95% CI; 1.28 to 2.43)、腎尿管摘出標本における多発腫瘍の有無(HR = 1.64, 95% CI; 1.09 to 2.47)と共に、術前尿細胞診陽性(HR = 1.41, 95% CI; 1.08 to 1.85)が腎尿管全摘術後の膀胱内再発を予測する独立した危険因子であった。

結論

腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者における尿細胞診陽性の膀胱内再発予測マーカーとしての有用性が示唆された。

文責 田中 伸之

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.32

The prognostic significance of vasohibin-1 expression in patients with prostate cancer.  Br J Cancer. 2013 May 28;108(10):2123-9.

Kosaka T, Miyazaki Y, Miyajima A, Mikami S, Hayashi Y, Tanaka N, Nagata H, Kikuchi E, Nakagawa K, Okada Y, Sato Y, Oya M.

背景及び目的

Vasohibin-1(VASH1)は癌の血管新生の調節に深く関与する内因性の血管新生抑制因子であるが、PCaにおける発現の意義や、その病態については未だ明らかになっていない。前立腺癌(PCa)の予後を予測する有用なマーカーは殆ど知られていない。そこで本研究は、PCaにおけるVASH1発現の検討を行った。

対象と方法

当院で限局性前立腺癌と診断され、前立腺全摘術が施行されたPCa(pT1-T3N0M0)167例を対象として、VASH1およびCD34の免疫染色を行い、各種臨床的パラメータ(年齢、術前PSA値、Gleason score、pT stage)との関連を検討した。術後PSA再発率をKaplan-Meier法により算出し、Log-rank testで検討した。Coxの比例ハザードモデルを用いて多変量解析を施行した。

結果

VASH1の発現は、正常組織ではほとんど認めず、癌の領域に有意に発現しており、high stage、 Gleason Score7以上の症例において有意に高い傾向(P<0.001)を認めた。単変量解析では術前PSA値、pT stage、微小血管密度(MVD)と共に、VASH1の高発現が有意に(P<0.001)術後PSA再発に関連した。VASH1の多変量解析の結果、pT stage (P<0.001)と共にVASH1の高発現(P=0.007)は、それぞれ術後PSA再発に関連する独立した予測因子であった。生存解析では、high stageかつVASH1の発現が高い症例は、最も予後が不良であった。

結論

前立腺癌においてVASH1の高発現は、術後PSA再発の独立した危険因子であり、PCaの進展への関与が示唆された。

コメント

本研究は内因性の血管新生抑制因子VASH1の、前立腺癌における予後マーカーとしての有用性を示した論文である。血管新生には異質性があり、VASH1の発現は真の血管新生の活性度を示す血管新生関連マーカーであるとも考察され、VASH1スコアの高い血管新生を内包するがん微小環境は、前立腺癌の進展に寄与していると示唆される。

文責 小坂 威雄

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Identification of drug candidate against prostate cancer from the aspect of somatic cell reprogramming. Cancer Sci. 2013 Aug;104(8):1017-26.

Kosaka T, Nagamatsu G, Saito S, Oya M, Suda T, Horimoto K.

目的

難治性がんにおけるがん幹細胞性獲得のプロセスと、体細胞からiPS細胞を誘導する際の多能性獲得のプロセスにおける遺伝子ネットワークの変遷の類似性に着目し、前立腺癌における、がん幹細胞性の再プログラム化による、抗がん治療耐性癌から抗がん治療感受性癌へ再プログラム化による新規治療戦略の確立を目的とする。

方法

ヒト前立腺癌細胞株DU145とLNCaPを対象として、多能性マーカーOCT4の内因性の発現に基づいたヒトiPS細胞のセレクションシステム(EOS選択システム:内因性のOCT4の発現に基づいて、GFPの発現と抗生剤耐性遺伝子が誘導されるシステム)を用いて、OCT4の発現が高い細胞群(DU145OCT4-H, LNCaPOCT4-H) を選別した。選別前の細胞群(DU145OCT4-N, LNCaPOCT4-N )と、ドセタキセル(DOC)の感受性、ヌードマウス皮下接種によるがん原性を比較した。マイクロアレイによる遺伝子発現を解析し、バイオインフォマティクスを応用して、遺伝子発現の再プログラム化のための候補薬剤を検討・選択し、それらの有効性を検討した。

結果

EOS選択システムはヒト前立腺癌細胞株において、OCT4の発現が高い細胞群を選択し得た。OCT4の発現が高い群(DU145OCT4-H)は、選択前の細胞群 (DU145OCT4-N)に比較して、in vitro, in vivoにおいてDOCに対する感受性が有意に低下していた(p<0.01)。DU145OCT4-Hは少量の細胞数でヌードマウスの皮下腫瘍を形成し(生着率33.3%:103細胞/ 12週間、66.7% : 104細胞/12週間、p<0.01)がん原性が亢進していた。遺伝子発現をConnectivity-Mapを用いて比較し、DU145OCT4-H からDU145OCT4-Nの遺伝子発現プロファイルに変換し得る候補薬剤を数理工学的に数種類同定した。DU145OCT4-Hに対しそれら候補薬をDOCと併用して投与した際の、DOCに対する感受性を検定したところ、抗ウイルス薬であるリバビリンが、in vitro, in vivoにおいて有意に抗腫瘍効果を発揮した。リバビリンの投与によりDU145OCT4-Hの遺伝子発現プロファイルは選択前のDU145OCT4-Nのプロファイルに変換されていることが、主成分分析で検定された。リバビリンはLNCaP用いた、同様なワークフローによる実験系においても同様に有効性を示した。

結論

前立腺癌において、DOC療法耐性・がん幹細胞性を有する難治性前立腺癌に対して、リバビリンはDOC耐性癌から感受性癌へと、その遺伝子ネットワークを再プログラム化し得る薬剤として有用な薬剤であることが示唆された。

コメント

幹細胞性の遺伝子ネットワークの変遷に着目し、がん幹細胞性を再プログラム化することで、抗がん治療耐性癌から抗がん治療感受性癌へと初期化が可能であることを示した論文である。リバビリンは現在臨床において既に使用されている薬剤で、本研究の成果は、迅速に臨床応用可能と考えられ、現在、当教室では、臨床研究検討・準備中である。

文責 小坂 威雄

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Prognostic significance of Bcl-xL expression and efficacy of Bcl-xL targeting therapy in urothelial carcinoma.

Shunsuke Yoshimine, Eiji Kikuchi, Takeo Kosaka, Shuji Mikami, Akira Miyajima, Yasunori Okada, Momotsugu Oya.

Br J Cancer. 2013 Jun 11;108(11):2312-20. doi: 10.1038/bjc.2013.216. Epub 2013 May 14.

目的

Bcl-xLは抗アポトーシスタンパクであり細胞死制御において重要な役割を担っている。しかしながら、上部尿路上皮癌においてその発現と予後との関連においては明らかではない。本研究ではBcl-xLタンパクの発現と予後の検討とBcl-xLタンパクを標的とした治療効果を検討した。

方法

当院において施行された腎尿管全摘除術のうち、組織学的診断で尿路上皮癌成分を認めた175例を対象とした。観察期間の中央値は35.0ヶ月。免疫組織学的にBcl-xLタンパクの染色を行い、腫瘍組織の内の発現の強度によりHighスコア群とLowスコア群に分類した。また、Bcl-xLの特異的な阻害剤であるバフィロマイシン(BMA)を用い尿路上皮癌細胞株での抗腫瘍効果を検討した。

結果

175例のうち、Bcl-xLタンパク発現が陽性であったものは164例(93.7%)であった。また、Highスコア群は49例であり、Lowスコア群は126例であった。生存分析では Highスコア群が有意にLowスコア群と比較し5年癌特異的生存率が低かった(p=0.0011)。また、pT2以上(p=0.0227)、High tumor Grade(p=0.0327)、Lymphovascular invasion(LVI) 陽性(p=0.0074)が有意に癌特異的生存率に影響を及ぼした。多変量解析の結果、High Bcl-xLスコアは癌特異的生存率において独立した予後因子であった(p=0.023)。BMAは尿路上皮癌細胞株(UMUC-3)においてBcl-xLタンパクを阻害剤することでアポトーシスを誘導し、In vivoにおいてもマウス皮下腫瘍モデルでの有意な抗腫瘍効果を認めた。

結論

Bcl-xLタンパクの発現は上部尿路上皮癌患者の予後解析において有意な分子マーカーであり、Bcl-xLタンパクをターゲットとした治療は尿路上皮癌患者において有望な戦略である可能性が示唆された。

文責 吉峰 俊輔

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Prognostic value of preoperative multiparametric magnetic resonance imaging (MRI) for predicting biochemical recurrence after radical prostatectomy.

Hattori S, Kosaka T, Mizuno R, Kanao K, Miyajima A, Yasumizu Y, Yazawa S, Nagata H, Kikuchi E, Mikami S, Jinzaki M, Nakagawa K, Tanimoto A, Oya M.

BJU Int. 2013 Jun 27. doi: 10.1111/bju.12329. [Epub ahead of print]

目的

Multiparametric-magnetic resonance imaging (mp-MRI)の診断的意義は多く報告されて来ているが、mp-MRIの予後予測効果に関する意義は明らかになっていない。本研究は、MRI陽性所見(MRI-positivity)の前立腺全摘除術後のPSA再発の予測効果についての検討を目的とする。

方法

2005年1月から 2009年12月までに当施設に於いて術前mp-MRIを施行した後に前立腺全摘除術を施行した症例の内、術前ホルモン療法を施行した症例を除外した314例を対象とした。mp-MRIの各phaseを1から5のConfidence levelに基づきscore化し、MRI postivityを定義した。術後PSA再発を予測する因子についてlog-rank検定、及びcox多変量解析を用いて検討した。

結果

MRI陰性例(83症例)の観察期間は56.8(±18.5)か月であり、うち2例(2.4%)で経過中にPSA再発がみられた。一方MRI陽性例(231症例)の観察期間は58.8(±18.7)か月であり、うち34例(14.7%)でPSA再発がみられた(p=0.006)。MRI positivityは直腸診陽性 (p = 0.039)、positive core rate≥0.2 (p <0.001)、biopsy GS≥8 (p < 0.001)、pathological GS≥8 (p= 0.005)と統計学的に有意に相関した。術後PSA再発を予測する周術期の統計学的に有意な予測因子は、術前因子のみを用いた多変量解析ではMRI positivity(p=0.031)、biopsy GS≥8(p=0.001)、positive core rate≥0.2 (p =0.012)であり、術後因子を含めた多変量解析に於いてはMRI positivity(p=0.016)、pathological GS≥8(p=0.020)、surgical margin positive(p<0.001)であった。共にMRI positivityは術後PSA再発を予測する統計学的に有意な因子であった。

結論

術前mp-MRIの陽性所見は前立腺全摘除術後のPSA再発の独立した予測因子であり、診断的意義に加えて、PSA再発の予後予測に有用なimaging biomarkerとしての意義が示唆された。

文責 服部 盛也

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Dual Phosphatidylinositol-3-Kinase/Mammalian Target of Rapamycin Inhibitor NVP-BEZ235 Sensitizes Docetaxel in Castration Resistant Prostate Cancer

Yota Yasumizu, Akira Miyajima, Takeo Kosaka, Yasumasa Miyazaki, Eiji Kikuchi, Mototsugu Oya

背景・目的

去勢抵抗性前立腺癌(castration- resistant prostate cancer; CRPC)におけるドセタキセル療法の耐性獲得機序の解明はCRPCの難治性克服のための喫緊の課題である。当教室ではPI3K/Akt/mTOR pathwayの活性化がCRPCにおける抵抗性の一端を担っていることを報告してきた。今回ドセタキセル抵抗性ヒトCRPC細胞株を用いて、PI3K/Akt/mTOR pathway阻害剤の有効性について検討した。

方法

ヒトCRPC細胞株C4-2及びC4-2AT6を研究の対象とした。C4-2AT6はC4-2をアンドロゲン除去下で長期培養し樹立された細胞株でPTEN欠損、PSA産生能を有し、かつドセタキセルに対して抵抗性を示す。PI3K/Akt/mTORシグナル阻害剤として、NVP-BEZ235:PI3K-mTOR1/2 dual inhibitorを使用しin vitro、in vivoにおける細胞増殖抑制効果、及びセタキセルとの併用による相加・相乗効果を検討した。

結果
<in vitro>

C4-2AT6におけるリン酸化Akt(pAkt)及びAktの下流であるリン酸化S6(pS6)の発現はC4-2と比較して有意に亢進していた。ドセタキセルの投与によってC4-2AT6におけるpAkt・pS6の発現は更に活性化されたが、NVP-BEZ235を用いることでpAkt・pS6の発現は十分に抑制された。NVP-BEZ235単剤投与はpAkt、pS6の発現を濃度・時間依存性に有意に抑制した。ドセタキセル単独(5nM)ではcell viabilityは59.8±4.2%であったのに対し、NVP-BEZ235(500nM)との併用では11.5±1.3%であり、Combination Index(CI)は0.39で相乗効果を認めた。

<In vivo>

ドセタキセル単独投与群(4r/kg)では腫瘍はそれぞれ140%、103%と増大傾向を認めたが、NVP-BEZ(40r/s)を併用することで、腫瘍径はコントロール比43.0%と有意な縮小を認めた。ドセタキセル(2r/kg)とNVP-BEZ235(12.5r/s)の投与量を減量しても、ドセタキセル単独投与群及びNVP-BEZ235単独投与群が腫瘍径においてコントロール群と比較して有意差を認めなかったのに対して(ドセタキセル単独89.8±9.8%、NVP-BEZ235単独81.2±6.4%)、ドセタキセル・NVP-BEZ235併用群ではコントロール群の6.1±5.5%と有意に腫瘍の縮小を認めた。

結論

ドセタキセル抵抗性前立腺癌細胞株C4-2AT6に対して、in vitro, in vivoにおいて、ドセタキセルとNVP-BEZ235を併用することで、高い抗腫瘍効果を認めた。この結果より、CRPCにおけるドセタキセルの治療抵抗性の克服のために、 PI3K-Akt-mTOR pathwayを治療標的することの有用性が示唆された。

文責 安水 洋太

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Effect of a Novel Nuclear Factor-kB Activation Inhibitor on Renal Ischemia-Reperfusion Injury

Hidaka Kono, Ken Nakagawa, Shinya Morita, Kazunobu Shinoda, Ryuichi Mizuno, Eiji Kikuchi, Akira Miyajima, Kazuo Umezawa, and Mototsugu Oya

Transplantation (In press)

目的

腎移植において温阻血時間が延長するとDelayed graft functionにつながることが知られている。NFkBは炎症性サイトカインの転写を促進する炎症惹起物質として知られており、腎虚血再還流障害の重要な因子となっている。我々はラットの腎虚血再還流障害モデルにおいて、新規NFkB活性阻害剤であるDehydroxymethylepoxyquinomicin (DHMEQ)の効果について検討した。

方法

ラットの両腎動脈をクランプする直前にDHMEQ(8mg/kg)を投与し(DHMEQ術前投与群)、虚血再還流障害に対する効果を評価した。ラットは代謝ケージにて飼育し両腎動脈のクランプ時間は30分とし、1日後または7日後に両腎を摘出した。

結果、考察

DHMEQ術前投与群はDay1からDay3までの24時間尿量が無治療群と比較して有意に多く、Day2からDay7までの尿中蛋白濃度は有意に少なかった。DHMEQ術前投与群のDay1の腎臓はPAS染色で、刷子縁の消失、基底膜上皮細胞の離開、間質の浮腫といった病変が無治療群と比較して少なく、0-5の6段階に層別化したPAS scoreにおいても有意差をみとめた(DHMEQ術前投与群2.1±0.2 、無治療群3.7±0.2,)。Day1の血清クレアチニンは0.76±0.21mg/dl、BUNは54.8±14.1mg/dlであり、無治療群の2.99±0.52mg/dl、129.8±17.3mg/dlと比較してそれぞれ74%減、58%減と有意に改善していた。腎臓内の汎T-cell、マクロファージや好中球浸潤も有意に少なく、IL-1, IFNγ、TLR2、TLR4等のmRNA発現も有意に少なかった。DHMEQはNFkBの細胞質から核内への移行を妨げる作用があるが、Day1の核と細胞質のNFkB比は有意に低かった。Day7での組織学的変化においては無治療群と比較して有意差を認めなかったが、蛋白尿に関しては有意差を認めることから、長期にわたる作用も期待された。DHMEQは制癌作用や免疫抑制効果もすでに報告されており、それらの効果は移植医療においては大いに期待されるものと考える。

結語

腎動脈をクランプする直前のDHMEQ投与は腎臓の虚血再還流障害に対して有用であり、今後腎移植への応用が期待された。

文責 香野 日高

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.31

Human castration resistant prostate cancer rather prefer to decreased 5α-reductase activity

Takeo Kosaka, Akira Miyajima, Hirohiko Nagata, Takahiro Maeda, Eiji Kikuchi Mototsugu Oya

Scientific Reports Published 14 February 2013

目的

アンドロゲンーアンドロゲン受容体(Androgen-Androgen Receptor:AR axis)経路は前立腺癌(Prostate Cancer: PCa)が去勢抵抗性前立腺癌(castration resistant prostate cancer: CRPC)へと進展した場合においても中心的役割を有しているが、リガンド供給源としてのステロイド産生系の意義は不詳である。本研究はCRPCにおける5α還元酵素活性の生化学的解析と、その意義の解明を目的とする。

方法

ヒトCRPC細胞株C4-2と、C4-2AT6(6月間のアンドロゲン除去下で培養し、安定的に増殖活性を有する株として当教室で樹立された細胞株)を解析の対象とした。5α還元酵素活性の同定とその解析のため、安定同位体13Cで修飾したステロイド前駆体を投与し、その代謝産物を液体クロマトグラフ・タンデム型質量分析計(LC/MS/MS)で測定し解析した。

結果

5α還元酵素活性の解析のために、13C-[2,3,4]-androstenedione:13C-Adioneを培養上清に添加し、13C-[2,3,4]-testosterone (13C-T) および13C-[2,3,4]-dihydrotestosterone (13C-DHT) をLC/MS/MSで測定した。13C-Tと13C-DHTはそれぞれ測定可能でC4-2AT6では単位時間当たりの13C-DHTの産生能は低下していた。5α還元酵素活性の指標として13C-DHT/13C-T比を算出したところ、C4-2AT6はC4-2に比してその比率が有意に低下していた。これらの結果からCRPCにおける5α還元酵素活性とDHT産生能の低下が示唆された。DHTに対する細胞応答性を検討したところ、PSAの産生はC4-2とC4-2AT6においてDHT投与の濃度・時間に依存して誘導されたが、細胞増殖能はむしろ濃度依存性に低下していた。

結論

本研究からCRPCにおける生化学的有意な5α還元酵素活性の存在が明らかとなった。本研究はアンドロゲン産生系解析のための有用な実験系を提供するものと考えられた。CRPCにおいてはDHTに対する依存度が低下し、5α還元酵素活性低下が示唆された。DHTに対する依存度が低下する場合があり、本研究はアンドロゲン産生系解析のための有用な実験系を提供するものと考えられた。

文責 小坂 威雄

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