業績紹介

論文紹介

慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.30

The Predictive Value of C-reactive Protein for Prognosis in Patients with Upper Tract Urothelial Carcinoma Treated with Radical Nephroureterectomy: A Multi-institutional Study
Tanaka N, Kikuchi E, Shirotake S, Kanao K, Matsumoto K, Kobayashi H, Miyazaki Y, Ide H, Obata J, Hoshino K, Hayakawa N, Ito Y, Kosaka T, Kodaira K, Oyama M, Miyajima A, Momma T, Nakagawa K, Ueno M, Oya M.
Eur Urol. 2012 Dec 1. pii: S0302-2838(12)01425-X. doi:
10.1016/j.eururo.2012.11.050. [Epub ahead of print]

目的

腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者における血清CRP値の予後予測マーカーとしての有用性を後ろ向きに検討した。

方法

1993〜2009年の間に、慶應義塾大学病院及び7関連施設で腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者の内、術前に血清CRP値の評価が可能であった564例を対象とした。平均観察期間は32ヶ月であった。臨床病理組織学的因子に加え血清CRP値と予後を統計学的に検討した。CRP>0.5mg/dlをCRP値上昇と定義した。

結果

術前のCRP値上昇は136例(24.1%)に認められた。単変量解析では術前CRP値の上昇は有意に術後再発と関連し、特にCRP>2.0mg/dlの症例で、その傾向は強く認められた。多変量解析の結果、病理学的因子に加えて、CRP値上昇は術後再発と関連する独立した危険因子であった(CRP 0.51-2.00: HR=1.47, CRP >2.00: HR=1.89)。腎尿管全摘術後の5年非再発生存率はCRP正常群では69.2%、CRP 0.51-2.00群では54.3%、CRP >2.00群では35.4%であった(P<0.001)。癌特異的生存率においても、CRP値上昇は癌死と関連する独立した危険因子であった(CRP 0.51-2.00: HR=1.74, CRP >2.00: HR=2.31)。

結論

上部尿路上皮癌患者における血清CRP値の予後予測マーカーとしての有用性が示唆された。

文責 田中 伸之

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Impact of Smoking Status on Bladder Recurrence Following Radical Nephroureterectomy in Patients with Upper Tract Urothelial Carcinoma.
J Urol. 2013 Jan 14. [Epub ahead of print]
Masayuki Hagiwara, Eiji Kikuchi, Nobuyuki Tanaka, Kazuhiro Matsumoto, Hiroki Ide, Akira Miyajima, Takeshi Masuda, So Nakamura, and Mototsugu Oya

背景

膀胱癌においては喫煙の臨床経過に及ぼす影響について数多く報告されているにもかかわらず、上部尿路上皮癌における喫煙の影響についての報告はこれまでにわずかしかされていない。今回、我々は腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌の術後膀胱内再発に及ぼす喫煙の影響を後ろ向きに検討した。

対象と方法

慶應義塾大学病院、済生会中央病院、さいたま市立病院の3施設で腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者の内、詳細な喫煙歴の調査が可能であった症例は313例であった。そのうち、膀胱癌の既往や同時性に膀胱癌が併発していた症例を除外した245例(男性176:女性69)を対象とし、臨床病理組織学的因子に加え喫煙歴の詳細と術後膀胱内再発を統計学的に検討した。

結果

平均観察期間は51か月であり、122例(49.4%)に膀胱内再発が確認された。喫煙歴を有する患者は124例であり、そのうち上部尿路上皮癌診断時に喫煙の習慣が存在した群を喫煙群(N=72)、診断時に既に禁煙していた群を禁煙者群(N=52)とした。喫煙歴を有する患者の平均喫煙本数は25.0本/日、平均喫煙年数は36.3年であった。単変量解析の結果、3年膀胱内無再発生存率は喫煙群:32.6%、禁煙者群:37.6%、非喫煙者群:61.7%であり、多変量解析の結果、上部尿路上皮癌患者の術後膀胱内再発には男性(p=0.013, HR; 1.90)および診断時の喫煙歴(喫煙群: p=0.035, HR; 1.58, 禁煙群: p=0.027, HR; 1.77)が独立した危険因子であった。また喫煙歴を有する124例のみを抽出し、喫煙量による術後膀胱再発のリスクの変化について再度、解析した。その結果、喫煙歴を有する患者において、pack-year≧50 (p=0.003, HR; 2.00)が術後膀胱内再発の独立した危険因子であった。

結論

喫煙は腎尿管全摘除術が施行された上部尿路上皮癌において有意に術後膀胱内再発を高める危険因子であった。さらに、その影響は喫煙量が多いほど大きくなることが示唆され、喫煙歴、喫煙量を考慮した膀胱内サーベイランスの必要性が示唆された。

文責 萩原 正幸

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What is the predictor of prolonged operative time during laparoscopic radical prostatectomy?
Gou Kaneko, Akira Miyajima, Satoshi Yazawa, Kazuyuki Yuge,
Eiji Kikuchi, Hiroshi Asanuma, Ken Nakagawa, Mototsugu Oya

目的

腹腔鏡下前立腺全摘除術 (LRP) の総手術時間に影響を与える因子として、BMIや前立腺重量が報告されている。LRPは性質の異なる複数のステップにより構成されるが、BMIや前立腺重量がどのステップに影響し、結果として総手術時間に影響を与えるかは検討されていない。当院のデータを用いて総手術時間に影響を与える因子を再検討し、その因子がどのステップの所要時間に影響するか検討した。

対象と方法

2008年9月〜2011年4月に腹腔鏡技術認定を受けた熟練した単一術者が施行した197例のうちビデオ評価が可能であった152例を対象とした。Step 1:ポート挿入〜閉鎖リンパ節郭清、Step 2: 内骨盤筋膜切開、Step 3: Dorsal vein complex (DVC) 結紮、Step 4: 膀胱頸部剥離、尿道切断、Step 5: 精管・精嚢剥離切断、Step 6: 直腸前立腺間剥離、尿道切断、Step 7: 膀胱尿道吻合の7ステップに分け、各ステップの所要時間を計測した。年齢、BMI、前立腺重量、レチウス腔断面積、下腹部手術既往の有無、前立腺再生検の有無、術前ホルモン療法施行の有無の各因子と、総手術時間や各ステップの所要時間との関連を検討した。

結果

平均手術時間は190.7分。各ステップの平均所要時間は、Step 1: 15.4分、Step 2: 10.5分、Step 3: 6.0分、Step 4: 15.8分、Step 5: 23.1分、Step 6: 22.5分、Step 7: 33.5分であった。総手術時間は、BMIおよび前立腺重量と有意に相関し、多変量解析でいずれも総手術時間の延長を予測する独立因子であった (BMI (≥ 25.0 kg/m2): P = 0.032, odds ratio (OR) = 2.319、前立腺重量: P = 0.041, OR = 1.034)。ステップ毎の検討においてBMI (≥ 25.0 kg/m2)は、Step 1: ポート挿入〜閉鎖リンパ節郭清 (P = 0.034, OR = 1.272)、Step 3: DVC結紮(P = 0.006, OR = 1.221)、Step 4: 膀胱頸部剥離、尿道切断 (P = 0.047, OR = 1.132)、Step 5: 精管・精嚢剥離切断 (P = 0.018, OR = 1.173)、Step 6: 直腸前立腺間剥離、尿道切断 (P = 0.018, OR = 1.027)の所要時間延長を予測する独立因子であった。一方、前立腺重量は、Step 2: 内骨盤筋膜切開 (P = 0.024, OR = 1.028)、Step 5: 精管・精嚢剥離切断 (P = 0.046, OR = 1.027)、Step 6: 直腸前立腺間剥離、尿道切断 (P = 0.046, OR = 1.027)の所要時間延長を予測する独立因子であった。また下腹部手術の既往を有する症例で腹膜の癒着によりポート挿入、レチウス腔展開に難渋することがあるが、Step 1: ポート挿入〜閉鎖リンパ節郭清の所要時間は下腹部手術既往の無い群と比べ有意に長く (P = 0.002)、多変量解析にて下腹部手術の既往は同ステップの所要時間延長を予測する独立因子であった (P = 0.013, OR = 3.968)。

結語

BMIと前立腺重量は、総手術時間の延長を予測する独立因子であった。BMIは大部分のステップの所要時間に影響し、前立腺重量は周囲からの剥離操作を要するステップの所要時間に影響することが明らかとなった。

文責 金子 剛

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How can lymphocele development be prevented after laparoscopic radical prostatectomy?
Yasumizu Y, Miyajima A, Maeda T, Takeda T, Hasegawa M, Kosaka T, Kikuchi E, Oya M. J Endourol. 2012 Dec 5. [Epub ahead of print]

背景及び目的

前立腺全摘術においてしばしば診断目的で閉鎖リンパ節郭清を施行する。その際の合併症であるリンパ嚢腫の感染は入院加療を必要とすることが多く、術後QOLを低下させる原因となる。限局性前立腺癌に対し腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術(Laparoscopic radical prostatectomy; LRP)及び閉鎖リンパ節郭清(pelvic lymph node dissection; PLND)を施行した症例を対象に、術後のリンパ嚢腫の発生に対する血管シーリングシステム(EnSeal®)の有用性について検討した。

患者と方法

2010年5月から2011年6月までの間に当院で腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術及び閉鎖リンパ節郭清を施行した120例を対象とした。症例は次の2群に振り分けた。1群:従来法(超音波凝固切開装置を使用)でPLNDを施行した群、2群:超音波凝固切開装置の代わりに血管シーリングシステム(EnSeal®)を使用した群。術1ヶ月後に腹部CTを施行し、各群でのリンパ嚢腫の発生に関して統計学的に検討した。

結果

術1ヶ月後のCT検査では63症例(52.5%)でリンパ嚢腫を認めた。1例(0.8%)でリンパ嚢腫の感染を認め、外科的処置(ドレナージ)を必要とした。リンパ嚢腫の発生頻度は両群間で有意差を認めなかった。一方、1500mm2以上の巨大リンパ嚢腫の発生頻度は血管シーリングシステムを使用した群において有意に減少した。多変量解析においても、血管シーリングシステムの使用は1500mm2以上の巨大リンパ嚢腫の発生を抑える唯一の因子であった。

結論

血管シーリングシステムを使用することでLRP及びPLND後の巨大なリンパ嚢腫の発生を予防することが可能であった。

文責 安水 洋太

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Risk factors for perioperative complications of laparoscopic adrenalectomy including single-site surgery.
Hattori S, Miyajima A, Maeda T, Hasegawa M, Takeda T, Kosaka T, Kikuchi E, Nakagawa K, Shibata H, Oya M.
J Endourol. 2012 Nov;26(11):1463-7. doi: 10.1089/end.2012.0274. Epub 2012 Sep 10.

目的

1992年に初めて施行されて以来、腹腔鏡下副腎摘除術は副腎腫瘍に対するGolden standardの術式として広く行われている。諸家の報告ではその合併症率は6.7-8.5%とされている。当研究では当院で施行した腹腔鏡下副腎腫瘍摘除術265例について、周術期合併症について検討を行った。

患者・方法

2001年5月から2011年11月までに当院で片側腹腔鏡下副腎摘除術(Laparoscopic adrenalectomy: LA)を施行された265例(うち単孔式(Laparoendoscopic single-site adrenalectomy: LESS-A)58例)について検討した。全ての手術は2名の泌尿器腹腔鏡技術認定医により、あるいは監督下に施行された。患者背景、American Society of Anesthesiologists-physical status (ASA-PS) grade、腹部手術の既往、腫瘍の種類、周術期データ、周術期の合併症につきデータを収集し、解析を行った。周術期合併症は術中より術後30日までの合併症と定義し、Clavien–Dindo classificationに従って分類を行った。

結果

平均年齢51.3歳、平均BMI22.9kg/m2、平均ASA-PS grade 1.77であった。平均手術時間は134分。69例で開腹手術の既往があった。開腹手術に移行したのは1例のみで、唯一この症例で輸血を必要とした。12例(4.6%)の症例で治療を必要とする周術期の合併症を認めた。合併症の発生に影響を与える因子として、単変量解析では、ASA –PS grade 3以上(p=0.003)が有意な因子であり、多変量解析でもASA-PS grade 3以上(p=0.010)が有意な因子であった。

結論

当院での腹腔鏡下副腎摘除術施行時の合併症の発生率は諸家の報告と同等かやや低かった。当研究に於いては手術手法(LA/LESS)、腫瘍径、腫瘍の左右、腫瘍種類等は合併症を予測する統計学的に有意な因子とはならなかった。ASA-PS grade 3以上の症例で合併症が起こりやすい傾向を認めた。

Does laparoendoscopic single-site adrenalectomy increase surgical risk in patients with pheochromocytoma?
Hattori S, Miyajima A, Maeda T, Hasegawa M, Takeda T, Kosaka T, Kikuchi E, Nakagawa K, Oya M.
Surg Endosc. 2012 Oct 6. [Epub ahead of print]

目的

単孔式腹腔鏡下手術が普及しつつあるが、褐色細胞腫(Pheochromocytoma : PHE)への適応は議論の余地があるところである。本検討では、PHEに対する単孔式腹腔鏡下副腎摘除術(Laparoendoscopic single-site adrenalectomy : LESS-A)の安全性について、通常の腹腔鏡下副腎摘除術(Conventional laparoendoscopic adrenalectomy: c-LA)と比較検討した。

患者・方法

2009年12月より2011年10月までにPHEに対してLESS-Aを施行された20例ならびに2002年7月より2009年10月までにPHEに対してc-LAを施行された30例を対象とした。全ての手術は2名の熟練した泌尿器腹腔鏡技術認定医に施行された。周術期データ、術中の血行動態、術中の使用薬剤等について比較検討を行った。

結果

年齢(LESS-A:51.5±2.8, c-LA:49.8±2.4)ならびにBMI(LESS-A: 21.7±0.6, c-LA: 21.6±0.6)について2群間で統計学的な有意差を認めなかった。50例の平均腫瘍径は45.1±4.0 (LESS-A:40.8±4.3, c-LA:48.1±4.3)mm、平均手術時間は151.8±10.6(LESS-A: 151.3±13.0, c-LA: 152.1±8.9)分であったが、いずれも2群間で有意差を認めなかった。輸血、ならびに開腹への移行を必要とした症例は両群で存在しなかった。LESS-Aの一例において、手術を安全に施行するために2つのポートを追加した。2群間で術中輸液量、術中出血量、術中血管作動薬の使用、術中血圧変動の有無、術後合併症、術後在院期間のいずれについても2群間で統計学的有意差を認めなかった。

結論

PHEに対するLESS-Aはc-LAと同様に安全に施行された。PHEに対してLESS-Aは、c-LAと同様に安全に施行し得る事が示唆された。

文責 服部 盛也

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Prognostic significance of 5-fluorouracil metabolism-relating enzymes and enhanced chemosensitivity to 5-fluorouracil by 5-chloro 2,4-dihydroxy-pyridine in urothelial carcinoma.
Ide H, Kikuchi E, Hasegawa M, Kozakai N, Kosaka T, Miyajima A,
Oya M. BMC Cancer. 2012 Sep 22;12:420. doi: 10.1186/1471-2407-12-420.

目的

近年、5-FU系抗癌剤であるS-1は、様々な癌において有効性を認めているが、尿路上皮癌における報告は認められない。また、5-FU関連代謝酵素であるTS、DPDと様々な癌における予後との関連が報告されているが、尿路上皮癌における報告は少ない。そこで、本院における上部尿路上皮癌患者の予後と5-FU関連代謝酵素との関連を検討し、尿路上皮癌細胞を用いた皮下腫瘍モデルを用いて、S-1の抗腫瘍効果を測定した。

方法

当院で診断、治療された上部尿路上皮癌176例を対象として、TSおよびDPDの免疫染色を行い、各種臨床的パラメータ(年齢、性別、grade、pT stage、脈管侵襲、リンパ節転移)との関連を検討した。生存率はKaplan-Meier法により算出し、有意差の検定はLog-rank testを用いた。Coxの比例ハザードモデルを用いて多変量解析を行い、独立した危険因子を検討した。In vitroでは各尿路上皮癌細胞株のTS、DPD値をELISAおよびreal-time PCRにて測定した。更に、それらの値と5-FUの感受性との関連をsiRNAにてTS、DPDをdown-regulationさせた細胞と比較して、検討した。In vivoでは尿路上皮癌皮下腫瘍モデルを作成しS-1の抗腫瘍効果を測定した。

結果

TSの発現は、high stage、high grade、脈管侵襲(LVI)陽性の症例において有意に高かった(p<0.05)。また、DPDの発現は、high gradeの症例において有意に高かった(p<0.05)。単変量解析では、grade、pT stage、LVI、リンパ節転移の有無と共に、TSの高発現が有意に無進展生存率(PFS)および疾患特異生存率(DSS)に関連した(p<0.05)。多変量解析では、pT stage、LVI陽性と共にTSの高発現は、PFSおよびDSSに関連する独立した危険因子であった。In vitroでは、TS、DPD値の上昇と5-FUに対する感受性の低下との関連がsiRNAによるTS、DPDのdown-regulationを行った細胞と比較して、確認された。In vivoでは、DPD高値の尿路上皮癌腫瘍モデルにおいて、S-1投与群は、UFT投与群、tegafur投与群、controlと比較した上で、有意な抗腫瘍効果が認められた(p<0.05)。

結論

TSは上部尿路上皮癌の予後において重要であると考えられた。また、S-1は、特にDPD値の高い尿路上皮癌細胞において、有用であることが示唆された。

文責 井手 広樹

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C-reactive protein: A biomarker of survival in patients with localized upper tract urothelial carcinoma treated with radical nephroureterectomy.
Obata J, Kikuchi E, Tanaka N, Matsumoto K, Hayakawa N, Ide H, Miyajima A, Nakagawa K, Oya M.
Urol Oncol. 2012 Nov 8. doi:pii: S1078-1439(12)00170-6. 10.1016/j.urolonc.2012.05.008.

背景と目的

血清CRP値は全身の炎症の非特異的マーカーだが、これまで様々な癌種においてその上昇と予後との関連が示唆されている。今回我々は、腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者における術前CRP値の予後予測マーカーとしての有用性を検討した。

方法

1993年〜2009年の間に当院において腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者183例を対象とした。平均年齢は70歳、平均観察期間は39ヶ月であった。CRP値は、0.5より大きい場合をCRP上昇群と定義した。炎症性疾患、自己免疫性疾患、血液疾患等の合併やactiveな感染が疑われるcaseなど、他要因によるCRP上昇が考えうる場合は除外した。臨床病理組織学的因子に加え、術前の血清CRP値と予後との関係を統計学的に検討した。

結果

42例(23.0%)に術前CRP値の上昇を認めた。CRP上昇群と対照群で、非再発生存率に有意な差を認め、多変量解析の結果、CRP上昇は病期進行例と共に再発を予測する独立した危険因子であった。癌特異的死亡率についてもCRP上昇群と対照群で有意な差を認め、癌特異的5年生存率は、対照群では84.3%であるのに対しCRP上昇群では64.7%であった。これに関しても同様に、病期進行例とCRP上昇のみが独立した予後不良因子であった。

結論

腎尿管全摘術を施行した上部尿路上皮癌患者において、術前CRP値は予後予測マーカーとして有用である可能性が示唆された。

文責 小幡 淳

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A Prospective Longitudinal Survey of Erectile Dysfunction in Patients with Localized Prostate Cancer Treated with Permanent Prostate Brachytherapy

Masashi Matsushima, Eiji Kikuchi, Takahiro Maeda, Jun Nakashima, Akitomo Sugawara, Toshiyuki Ando, Ryuichi Mizuno, Hirohiko Nagata, Akira Miyajima, Naoyuki Shigematsu and Mototsugu Oya

J Urol. 2012 Sep 24. doi:pii: S0022-5347(12)04979-8. 10.1016/j.juro.2012.09.086. [Epub ahead of print]

目的

永久挿入密封小線源治療に関して、患者のQOLを低下させる要因のひとつである勃起不全に注目し、検討した。

方法

2004年から2010年までに当院で限局性前立腺癌に対して永久挿入密封小線源治療を施行した261例のうちホルモン治療施行症例、PDE-5阻害薬内服症例、IIEF未回答症例を除く119例を本検討の対象とした。治療前、治療後3、6、12、18、24、36カ月後にIIEFアンケート調査を行い、性機能を評価した。勃起不全の重症度は、勃起機能(EF)スコアを用いて5段階に分類した。また勃起能は、EFスコアにおいて11点以上を勃起能ありと判定した。

結果

治療前に119例中48例(41.3%)に勃起能を認めた。全119症例を対象とした場合、総IIEF、各ドメインスコアは治療12ケ月後において治療前と比べて有意に低下した。勃起不全の重症度は治療前で正常勃起機能群(12.6%, N=15)、軽症群(11.8%, N=14)、軽症〜中等症群(6.7%, N=8)、中等症群(9.2%, N=11)、重症群(59.7%, N=71)の割合であったが、治療12ケ月後にはそれぞれ、5.9% (N=7)、7.6% (N=9)、4.2% (N=5)、8.4% (N=10)、73.9% (N=88)であった。治療前勃起能を有していた48症例を対象とした場合、治療12ケ月後勃起不全の重症度分類が変化しなかった症例は16例で、勃起不全の重症度が増悪した症例に比べて治療前のPSA値、臨床病期、Gleason score、現病歴、治療前IIEFの各ドメインスコア、治療前総IIEFに有意差を認めなかった。一方、年齢が70歳以上では治療12ケ月後勃起不全の重症度が増悪した症例が有意に多い(p=0.03)傾向が認められた。

結論

永久挿入密封小線源治療により性機能の低下、勃起能の重症度の悪化が認められた。患者年齢は永久挿入密封小線源治療後の勃起不全の発症に関連していると考えられた。

文責 松島 将史

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.29

Does pelvic lymph node dissection improve the biochemical relapse-free survival in low-risk prostate cancer patients treated by laparoscopic radical prostatectomy?

Daimon T, Miyajima A, Maeda T, Hattori S, Yasumizu Y, Hasegawa M, Kosaka T, Kikuchi E, Nakagawa K, Oya M. J Endourol. 2012 Sep;26(9):1199-202. Epub 2012 Jun 25.

背景及び目的

低リスク群前立腺癌(cT2a以下、PSA<10ng/ml かつ Gleason score 6以下)における腹腔鏡下根治的前立腺全摘除術(Laparoscopic radical prostatectomy; LRP)施行時の骨盤リンパ節郭清の意義は十分に評価されていない。今回我々は、低リスク群前立腺癌患者でのLRP施行時の骨盤リンパ節郭清施行とその後のPSA再発との関連について検討を行った。

患者と方法

当院で2002年から2006年に術前ホルモン療法を施行せずLRP施行した286例のうち、低リスク群であった139例を対象とした。骨盤リンパ節郭清を施行した85例と施行しなかった54例の2群に分け、PSA再発について統計学的に検討した。なお、骨盤リンパ節郭清は閉鎖リンパ節領域で行った。

結果

平均リンパ節郭清数は5.4±0.4 (2-22)、平均観察期間は69.4ヶ月であった。5年、7年PSA非再発率は骨盤リンパ節郭清群ではそれぞれ90.1%、88.3%、骨盤リンパ節郭清非施行群では82.4%、82.4%であった(p=0.278)。

リンパ節陽性例は1例も認めず、術後の合併症は、症候性リンパ嚢腫となった例を1例認めた。また、骨盤内リンパ節郭清の平均時間は約16分であった。

結論

今回の検討では、低リスク群前立腺癌においてLRP時の骨盤リンパ節郭清施行の有無はPSA非再発率とは統計学的有意な関連は認めなかった。低リスク群前立腺癌の患者では、LRP時の骨盤リンパ節郭清を省略できる可能性と、省略することで合併症のリスクを減らし、また、手術時間を短縮できる可能性が示唆された。

文責 大門 達明

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Enhancement of radiosensitivity by a unique novel NF-κB inhibitor, DHMEQ, in prostate cancer
Kozakai N, Kikuchi E, Hasegawa M, Suzuki E, Ide H, Miyajima A, Horiguchi Y, Nakashima J, Umezawa K, Shigematsu N, Oya M. Br J Cancer. 2012 Aug 7. [Epub ahead of print]

目的

前立腺癌における放射線治療抵抗性の獲得の機序としてNF-κB活性化が強く関与している。放射線照射によるNF-κB活性の上昇が前立腺癌に対する放射線治療の限界となっており、NF-κBの活性阻害作用を有するDHMEQを用いた放射線増強効果の可能性について検討した。

方法

In vitroでは前立腺癌細胞株LNCaP(ホルモン感受性)およびPC-3(ホルモン不応性)を使用して、種々の濃度または線量のDHMEQ投与および放射線照射を行った。増殖抑制効果はコロニー形成試験、細胞周期解析はBrdU染色によるフローサイトメトリー、NF-κB活性の測定はEMSA、蛋白発現の検出はwestern blotにより解析を行った。In vivoではPC-3マウス皮下腫瘍モデルを作成し抗腫瘍効果を検討した。

結果

放射線照射(4Gy以上)にDHMEQ投与(LNCaP:2.5μg/ml以上、PC-3:5.0μg/ml以上)を併用した場合にコロニー形成抑制効果を増強した。細胞周期解析ではLNCaP、PC-3における併用治療群(44.8%、56.1%)にて、無治療コントロール群(26.7%、30.8%)、DHMEQ単独群(24.8%、42.5%)、放射線単独群(38.0%、46.6%)と比べ明らかなG2/M arrestの増強が確認された。また放射線照射によりNF-κB活性化が確認されたがDHMEQはこれを抑制し、放射線照射によるp53、p21(LNCaP)および14-3-3σ(PC-3)の発現はDHMEQ投与によりさらに増強した。皮下腫瘍モデルによる検討では、DHMEQ投与および放射線照射の併用は、未加療コントロール群に対し85.1%、DHMEQ単独投与群に対し77.1%、放射線照射群に対し64.7%の縮小効果を認めた。

結論

DHMEQは前立腺癌において放射線照射により活性化されたNF-κBを抑制し、増殖抑制効果を増強させると考えられた。DHMEQおよび放射線照射は放射線抵抗性前立腺癌に対する治療として有用であることが示唆された。

文責 小堺 紀英

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Prognostic value of renin-angiotensin system blockade in non-muscle invasive bladder cancer
Annals of Surgical Oncology, 2012 Aug 8. [Epub ahead of print] Kazuyuki Yuge, Akira Miyajima, Nobuyuki Tanaka, Suguru Shirotake, Takeo Kosaka, Eiji Kikuchi, and Mototsugu Oya Both Kazuyuki Yuge and Nobuyuki Tanaka contributed equally to this work.

背景・目的

我々は今まで様々な泌尿器科癌においてアンギオテンシンUTypeT受容体の発現とその発現が腫瘍増大・転移・血管新生に関わっていること、レニンアンギオテンシン系(RAS)がVEGFの産生を導き、そしてRASの阻害にて血管新生阻害が認められることを報告してきた。今回我々が注目しているACE阻害薬やARBといったRAS阻害薬の内服が、筋層非浸潤性膀胱癌の予後へどのように影響をするのか後ろ向きに検討した。

方法

1999年から2009年までに当院で施行したTUR-Btのうち、6か月以上当院でフォローされ内服薬の調査が可能であった330人を対象とした。臨床病理学的所見、術後膀胱注入療法、降圧薬内服(RAS阻害薬または非RAS系降圧薬)と筋層非浸潤性膀胱癌の膀胱内再発及び進展との関連につき検討を行った。

結果

116名(35.2%)の患者がTUR-Bt施行時に降圧薬を内服していた。その内、RAS阻害薬を内服していたのは51名(15.5%)であった。5年非再発率はRAS阻害薬内服群で78.4%であったことに対し、非内服群は53.3%と有意な差を認めた(p=0.017)。一方、非進展率については両者に差を認めなかった。多変量解析において膀胱内再発の危険因子は多発腫瘍(p<0.001, HR:2.13)、BCG膀胱注入療法なし(p=0.001, HR:1.93)、RAS阻害薬内服なし(p=0.010, HR:2.26)であった。これはBCG施行群のみのサブグループ解析でも同様の結果が得られた。

結論

もうすでに実臨床にて降圧薬として使用されているRAS阻害薬は筋層非浸潤性膀胱癌の膀胱内再発のリスクを低減させる可能性のある薬剤であることが示唆された。

文責 弓削 和之

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Visceral obesity is a strong predictor of perioperative outcome in patients undergoing laparoscopic radical nephrectomy.
BJU Int. 2012 May. [Epub ahead of print]
Hagiwara M, Miyajima A, Hasegawa M, Jinzaki M, Kikuchi E, Nakagawa K, Oya M.

背景

近年、日本においても肥満患者は増加傾向を示し、肥満患者に対し体腔鏡下手術を施行する機会が増えてきている。肥満は手術の難易度を上昇させ、これまではBMIがその術前の指標としてよく使用されてきた。しかしBMIが必ずしも手術成績に反映されないことが多い。今回、我々は内臓脂肪に注目し、腎細胞癌に対する腹腔鏡下根治的腎摘除術(LRN)の手術時間に影響を与える因子について統計学的に検討を行った。

対象と方法

2006年から2010年までの間に当院において腎細胞癌の診断で、LRNを施行した121例を対象とし、手術時間に影響を与える因子について統計学的検討を行った。術前のCTを用いて臍部の高さでの全脂肪量、内臓脂肪量、皮下脂肪量を測定した。 メタボリック症候群の過去の文献をもとに内臓脂肪を100mm2以上の群を内臓肥満と定義し、内臓脂肪が与える手術への影響について統計学的に解析を行った。

結果

術前のCTで測定された脂肪量の結果は平均全脂肪量267.7±109.5 cm2、平均皮下脂肪量122.6±61.8 cm2、平均内臓脂肪量145.0±67.8 cm2であった。LRNにおいてBMIと手術時間は有意に相関を認めた(p <0.001, r=0.316)。一方、内臓脂肪量でも手術時間と有意な相関を認め、またその相関係数はBMIよりも高かった(p <0.001, r=0.348)。また平均手術時間においては正常群では168.3 ± 42.6分であったのに対し、内臓肥満群では205.7 ± 57.5分と有意に内臓肥満群で手術時間が延長していた(p <0.001)。多変量解析を行った結果、内臓肥満が手術時間を延長する唯一のリスク因子であった(p=0.009, odds ratio; 3.70)。

結語

メタボリック症候群診断の一つの因子である内蔵脂肪は腎細胞癌に対するLRNの難易度を高くし、その影響はこれまでの肥満の指標となっていたBMIよりも手術時間に強く相関することが分かった。CTによる内臓脂肪測定は術前にその患者の手術の難しさを推測する良い指標となり得ると考えられた。

文責 萩原 正幸

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.28

The prognostic significance of vasohibin-1 expression in patients with upper urinary tract urothelial carcinoma.
Miyazaki Y, Kosaka T, Mikami S, Kikuchi E, Tanaka N, Maeda T, Ishida M, Miyajima A, Nakagawa K, Okada Y, Sato Y, Oya M.
Clin Cancer Res. 2012 Aug 1;18(15):4145-53. Epub 2012 Jun 6.

目的

上部尿路上皮癌(upper urinary tract urothelial carcinoma:UTUC)の予後を予測する有用なマーカーはほとんど知られていない。Vasohibin-1(VASH1)は血管新生抑制因子として近年同定され、癌の血管新生にも深く関与することが報告されていきているが、UTUCにおける発現やその意義については未だ明らかになっていない。そこで本研究は、UTUCにおけるVASH1の腫瘍内の発現の検討を行った。

対象と方法

当院で診断、治療された上部尿路上皮癌(pTa-T3N0M0)171例を対象として、CD34およびVASH1の免疫染色を行い、各種臨床的パラメータ(年齢、性別、grade、pT stage、脈管侵襲、補助化学療法)との関連を検討した。生存率はKaplan-Meier法により算出し、有意差の検定はLog-rank testを用いた。Coxの比例ハザードモデルを用いて多変量解析を行い、独立した危険因子を検討した。

結果

VASH1の発現は、high stage, high gradeの症例において有意に高い傾向(p<0.05)を認めた。単変量解析ではgrade、pT stage、脈管侵襲(LVI)、補助化学療法施行の有無と共に、VASH1の高発現が有意に(p=0.017)術後再発に関連した。VASH1の多変量解析の結果、grade(P=0.021, HR=4.20)、LVI陽性(P<0.001, HR=5.05)と共にVASH1の高発現(P=0.024, HR=2.10)は、それぞれ術後再発に関連する独立した危険因子であった。生存解析では、LVI陽性かつVASH1の発現が高い症例は、最も予後が不良であった。

結論

上部尿路上皮癌においてVASH1の高発現は、術後再発の独立した危険因子であり、UTUCの進展への関与が示唆された。

文責 宮崎 保匡

コメント

本研究は、Vasohibinを発見した東北大学加齢学研究所腫瘍循環研究分野佐藤靖史教授の研究室と当大学病理学教室との共同研究によって、血管新生抑制因子であるVasohibin-1発現がUTUCの有用な予後マーカーであることを明らかにした論文である。今後、UTUCの生命予後の改善に向けて、Vasohibin-1を含む血管新生制御機構の更なる検討と臨床応用への発展が期待される。

文責 小坂 威雄

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Prognostic Significance of High Nuclear Grade in Patients with Pathologic T1a Renal Cell Carcinoma
Suzuki K, Mizuno R, Mikami S, Tanaka N, Kanao K, Kikuchi E, Miyajima A, Nakagawa K, Oya M.
Jpn J Clin Oncol. 2012 June 14. [Epub ahead of print]

背景及び目的

4cm以下の腎細胞癌における予後を予測する因子についてはいくつか報告が散見されるが、未だ十分な解明が成されていないのが現状である。当施設において腎細胞癌に対して手術療法を施行した症例のうち、病理学的T1aであった症例の術後の再発、転移について検討した。

対象と方法

1996年から2009年の間に、当院で腎腫瘍に対する手術を施行され、病理学的に腎細胞癌T1aと診断された356症例のうち、初発かつ単発であった338例を対象とした。Cox比例ハザードモデルを用いて、年齢、性別、腫瘍径、術式、腫瘍の病理学的因子と、術後の再発、転移との関連につき検討した。High gradeとLow gradeの2群で、無再発生存期間のKaplan-Meier曲線を作成し、Log-rank検定を行った。病理学的事項については、腎癌取扱い規約(2011年)に則った。

結果

Fuhrman gradeにおける分布はそれぞれG1 68例 (20.1%)、G2 242例(71.6%)、G3 21例 (6.2%)、G4 7例 (2.1%)であった。再発、転移は11例(3.3%)において認められ、そのうち9例が転移、2例が局所再発であった。単変量、多変量解析ともに、gradeが腫瘍の再発、転移の危険因子であった。他の臨床病理学的因子との間には有意差は認められなかった。5年無再発生存率はLow grade症例において96.8%であったのに対して、High grade症例においては67.8%であった。

結語

腎細胞癌の病理学的T1a症例において、Gradeは独立した術後予後因子である可能性が示唆された。High gradeの症例は術後比較的高い確率で再発、転移を来すため、より注意深いフォローアップが必要であると考えられた。

文責 鈴木賢次郎

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Prognonstic value of plasma fibrinogen levels in patients with localized upper tract urothelial carcinoma
Tanaka N, Kikuchi E, Matsumoto K, Hayakawa N, Ide H, Miyajima A, Nakamura S, and Oya M
BJU Int. 2012 Jul 3. [Epub ahead of print]

目的

腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者における血清フィブリノーゲン値の予後予測マーカーとしての有用性を後ろ向きに検討した。

方法

1995〜2009年の間に、慶應義塾大学病院及び済生会中央病院において腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者の内、術前に血清フィブリノーゲン値の評価が可能であった218例を対象とした。平均観察期間は51ヶ月であった。臨床病理組織学的因子に加え血清フィブリノーゲン値と予後を統計学的に検討した。

結果

観察期間に45例に術後再発が認めら、36例に癌死を認められた。平均血清フィブリノーゲン値は362 ± 103 (mg/dL)であった。単変量解析では血清フィブリノーゲン値の上昇は有意に術後再発及び癌特異的生存率と関連し、特に450 (mg/dL)以上の症例で、その傾向は強く認められた。多変量解析の結果、病理学的因子に加えて血清フィブリノーゲン値の上昇が術後再発及び癌特異的生存率と関連する独立した危険因子であった。摘出標本の病理組織学的因子の術前予測では、血清フィブリノーゲン値の上昇はpT3・Lymphovascular invasionの有無を予測する独立した術前因子であった。

結論

上部尿路上皮癌患者における血清フィブリノーゲン値の予後予測マーカーとしての有用性が示唆された。

文責 田中伸之

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.27

Risk of subsequent tumour recurrence and stage progression in bacille Calmette-Guerin relapsing non-muscle-invasive bladder cancer.
Matsumoto K, Kikuchi E, Shirakawa H, Hayakawa N, Tanaka N, Ninomiya A, Miyajima A, Nakamura S, Oya M BJU Int. 2012 May 10. [Epub ahead of print]

背景及び目的

BCG治療抵抗性筋層非浸潤性膀胱癌、いわゆるBCG failureには初回BCG治療6カ月以内に腫瘍消失を認めない症例(BCG refractory)、BCG治療非完遂症例(BCG intolerant)、BCG膀注後6ヶ月以降の再発症例(BCG relapsing)など種々のものが含まれる。これらを同一に取り扱うことはBCG治療後の治療指針の一貫性を大きく損なう。今回多数のBCG relapsing症例における追加BCG注入療法の意義を検証した。

患者と方法

保存的加療のBCG relapsing症例(N=183)を対象とし、その後の再発、進展の危険因子を同定した。平均観察期間は約5年であった。

結果

BCG relapsing腫瘍に対してTUR-BTのみの治療が40例に、追加BCG膀注が119例に、抗癌剤膀注が24例に施行された。Relapsing腫瘍の病理学的high risk所見(pT1 and/or Grade3 and/or concomitant CIS)が独立したその後の腫瘍再発予測因子であった。また追加BCG膀注は有意にその後の再発を予防することが証明された。その後の腫瘍進展に関してもrelapsing腫瘍の病理学的high risk所見は独立した予測因子であったが、BCG膀注のその後の進展予防効果を認めなかった。

結論

BCG relapsing腫瘍に対しては、その後の再発を有意に予防する追加BCG膀注が有用であると考えられた。しかし病理学的high risk所見をもつ腫瘍はその後進展する可能性があり、またBCG膀注の進展予防効果もないため、膀胱全摘術も考慮すべきであると考えられた。

文責 松本 一宏

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The Benefit of Laparoscopic Partial Nephrectomy in High Body Mass Index Patients.
Kaneko G, Miyajima A, Kikuchi E, Nakagawa K, Oya M.
Jpn J Clin Oncol. 2012 May 4. [Epub ahead of print]

背景

腎細胞癌(RCC)の危険因子である肥満患者は年々増加傾向にあり、現在、RCC手術の29-42%が肥満(WHO分類、BMI≧30.0 kg/m2)患者に対して施行されている。また画像診断の普及により、小径RCCの発見率が増加しており、術後腎機能などの利点より、腎部分切除術などのnephron sparing surgeryが望ましいとされる。よって、肥満患者に対しnephron sparing surgeryを施行する機会は、今後、ますます増加すると予測される。

腹腔鏡下腎部分切除術(LPN)は開腹腎部分切除術(OPN)と同等の制癌効果を有し、より低侵襲な術式と考えられているが、肥満患者に対するLPNの検討は充分になされていない。

本研究は、BMIがLPNとOPNの手術成績に与える影響を調べ、さらに高BMI患者はLPNの特性である低侵襲性の恩恵を受けることができるか検討した。

方法

当院で施行したLPN 47例、OPN 110例のデータを後方視的に収集し、手術時間の延長、出血量の増加、および阻血時間の延長を寄与する因子を多重ロジスティック回帰分析にて検討した。

結果

OPNでは、BMIと手術時間(R=0.455)、BMIと出血量(R=0.364)の間に有意な相関を認め、多変量解析にてBMIは手術時間の延長、および出血量の増加を予測する独立因子であった(手術時間延長: P=0.012, Odds ratio=1.183、出血量増加: P<0.001, Odds ration=1.325)。LPNでは、BMIはこれらの予測因子ではなかった。

BMI 25.0kg/m2未満群において、LPNの平均手術時間はOPNと比して有意に長かったが、その差は15分程度であった。一方、BMI 25.0kg/m2以上群では、両術式の平均手術時間はほぼ同等であった。BMI 25.0 kg/m2以上群と未満群のいずれにおいても、LPNの出血量はOPNより有意に少なかった。

腫瘍径は両術式の阻血時間の延長を予測する独立因子であった(LPN: P=0.043, Odds ratio=2.934、OPN: P=0.003, Odds ratio=2.136)。

結論

BMIはOPNの手術時間の延長、および出血量の増加を予測する独立因子であったが、LPNではBMIは因子ではなかった。LPNはBMIの影響が少ない術式であり、特に高BMI患者では、より低侵襲性の恩恵を受けることが可能であると考えられた。

文責 金子 剛

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.26

Prognostic significance of Bacillus Calmette-Guerin failure classification in non-muscle-invasive bladder cancer.
Shirakawa H, Kikuchi E, Tanaka N, Matsumoto K, Miyajima A, Nakamura S, Oya M. BJU Int. 2012 Feb 7 [Epub ahead of print]

背景及び目的

BCG膀胱内注入療法(以下BCG療法)は非筋層浸潤性膀胱癌の再発予防や上皮内癌の治療として広く用いられている。過去の報告において、BCG療法後の再発は’BCG failure’と表現されているものの報告毎に一貫性なく定義されており、BCG療法後の進展率の報告毎の違いの一因と考えられている。さらに、ある特定のBCG療法後再発様式が有意に予後不良であるとの報告が散見されていた。

NiederらはBCG療法への治療反応に着目して再発様式を4群(BCG-refractory、-resistant、-relapsing、-intolerant)に分類した(Nieder AM, et al. Urology 2005; 66:108-25)。今回我々はNiederらの定義に従い患者を再発様式別に分類し、進展因子を検討した。

患者と方法

慶應義塾大学病院及び済生会中央病院において、1987年から2009年までにCISを除いた非筋層浸潤性膀胱癌に対して初回のBCG導入療法を施行された患者521名のうち、再発をきたした173名を対象とした。

173名を上記再発様式に従って4群に分類、非進展率はKaplan-Meier法にて算出し、有意差の検定にはlog-rank test を用いた。Coxの比例ハザードモデルを用いた多変量解析にて、再発様式・年齢・性別・病理組織学的所見を変数として独立した進展因子を検討した。非癌死率についてもKaplan-Meier法にて算出し、有意差の検定にはlog-rank test を用いた。

結果

観察期間の中央値は4.7年であった。173名のうち42名がrefractory群に、3名がresistant群に、106名がrelapsing群に、22名がintolerant群に分類された。173名のうち24名に進展を認めた。Refractory群のBCG療法前の病理組織学的所見は他群と比較して悪性度が高かった。

Kaplan-Meier法において、refractory群・relapsing群・intolerant群における10年非進展率は53.2%・91.1% ・93.8%であり、refractory群は他群より有意に進展率が高かった(vs. relapsing群 P<0.001; vs. intolerant群 P=0.007)。多変量解析において、BCG failure時の病理組織学的所見Grade3(P=0.014; RR 2.84)及び再発様式refractory(P<0.001; RR 4.68)が独立した進展因子であった。

同様に、refractory群・relapsing群・intolerant群における10年非癌死率は61.8%・90.6%・92.9%であり、refractory群は有意に癌死率が高かった(vs. relapsing群 P<0.001; vs. intolerant群 P=0.019)。

結論

Niederらの再発様式の分類は、BCG failureの中でも特に予後不良な集団を抽出可能であった。BCG failureは異質な集団で構成されており、それぞれの集団に対する個別の治療・観察方法の確立が望まれると考えられた。

文責 白川 洋

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Prognostic role of KiSS-1 and possibility of therapeutic modality of metastin, the final peptide of the KiSS-1 gene, in urothelial carcinoma
Toshikazu Takeda, Eiji Kikuchi, Shuji Mikami, Eriko Suzuki, Kazuhiro Matsumoto, Akira Miyajima, Yasunori Okada and Mototsugu Oya
Mol Cancer Ther, 2012 Feb 24. [Epub ahead of print]

目的

KiSS-1遺伝子は悪性黒色腫の転移抑制遺伝子として同定された。いくつかの癌においてその発現と予後との関連が検討されているが、いまだ一定の見解は得られていない。また、KiSS-1の産生ペプチドの断片であるメタスチンはGPR54レセプターと結合することにより転移を抑制すると考えられている。上部尿路腫瘍におけるKiSS-1、GPR54発現と予後との関連、並びに、メタスチンのマウス膀胱癌肺転移抑制効果について検討した。

方法

当院にて腎尿管全摘術を施行した上部尿路腫瘍151例を対象とした。免疫組織染色によるKiSS-1、GPR54発現と病理組織学的所見、予後との関連を検討した。メタスチンの転移抑制効果の検討には、転移能を有するマウス膀胱癌細胞株MBT-2 variant(MBT-2V)を用いた。MBT-2VのKiSS-1、GPR54の発現はreal time PCR、免疫組織染色にて検討した。殺細胞効果はWST assayを用いた吸光度測定法にて、細胞浸潤はmatrigel invasion assayにて検討した。MMP9の発現、活性はreal time PCR、Zymographyにて検討し、NF-kBの発現、活性はWestern blot、EMSAにて検討した。マウス膀胱癌肺転移モデルは 5×105個のMBT-2V をC3Hマウスに尾静注して作成した。メタスチン(1.17 mg/kg)の連日腹腔内投与を行い、肺の表面にできた転移巣の数、マウスの生存期間を検討した。

結果

上部尿路腫瘍の免疫組織染色において、KiSS-1低発現は、独立した転移予測因子(p=0.028)、予後因子(p=0.021)であったが、GPR54はどちらの因子でもなかった。また、血行性転移を来した症例はリンパ行性転移を来した症例に比べ、有意にKiSS-1発現は低下していた(p=0.011)。MBT-2VにはGPR54は発現していたが、KiSS-1は発現していなかった。メタスチン投与により殺細胞効果は認めなかったが、細胞浸潤は濃度依存的に減少した。また、NF-kBの核内移行が抑制され、MMP9の発現は約40%抑制された(p<0.05)。肺転移巣はメタスチン群は6.3±2.3個(n=15)であり、コントロール群の30.4±5.1個(n=15)に比して有意に抑制され (p<0.01)、メタスチン投与によりマウスの生存期間は有意に延長した(p<0.01)。

結論

KiSS-1は上部尿路腫瘍の予後因子であり、KiSS-1産生ペプチドの断片であるメタスチンは膀胱癌の転移を抑制する新規薬剤となりうる可能性が示唆された。

文責 武田 利和

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.25

Regulation of monocyte-chemoattractant protein-1 through angiotensin II type 1 receptor in prostate cancer
Suguru Shirotake, Akira Miyajima, Takeo Kosaka, Nobuyuki Tanaka, Eiji Kikuchi, Shuji Mikami, Yasunori Okada, Mototsugu Oya
Am J Pathol 2012, Jan 5 [Epub ahead of print]

背景及び目的

近年、前立腺癌の進展や骨転移に関して、腫瘍微小環境におけるMCP-1の発現が関連するという知見が集積されつつあるが、その制御機構に関する検討は不十分であり、いまだ臨床応用にはいたっていない。
MCP-1は、炎症性疾患において、アンギオテンシンII (AngII)1型受容体(AT1R)の制御を受けると報告されており、今回われわれは、そういった観点から、MCP-1の発現制御機構について検討した。

患者と方法

当院で診断、治療された限局性前立腺癌121例および去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)による剖検症例17例、これら138例のパラフィン切片を用いてMCP-1およびマクロファージの免疫染色を行い、各種臨床的パラメータ(年齢、術前PSA、Gleason score、pT stage)との関連を検討した。
PSA非再発率はKaplan-Meier法により算出し、有意差の検定はLog-rank testを用いた。
Coxの比例ハザードモデルを用い多変量解析を行い、独立した危険因子を検討した。
In vivoおよびin vitroの検討では、LNCaP、C4-2、C4-2AT6という3種類のヒト前立腺癌細胞株を用い、AT1Rを介したMCP-1の制御機構の検討については免疫染色、ウェスタンブロット法、およびELISA法を用いた。
ARBはカンデサルタン(in vivo; TCV116, in vitro; CV11974)を用いた。

結果

臨床検体においてGleason score 7以上、pT3以上およびCRPC症例でMCP-1の発現ならびにマクロファージの浸潤が有意に多く、各種パラメータを用いた多変量解析の結果、PSA再発に関する独立危険因子は術前PSA 15ng/ml以上(p=0.009, HR 2.48)とMCP-1高発現(p<0.05, HR 2.20)であった。
In vivoの検討では、C4-2AT6皮下腫瘍モデルでAT1RおよびMCP-1の発現が最も高く、TCV116によってMCP-1の発現とマクロファージの浸潤を有意に抑制した。
またin vitroではC4-2AT6において、AngII刺激による有意なMCP-1の発現上昇を認め、CV11974およびPI3K阻害剤によって有意な抑制効果を認めた。
さらにAngII刺激によってAktのリン酸化を誘導し、CV11974投与によって有意に抑制した。

結論

前立腺癌の高悪性度症例やCRPC症例ではMCP-1の発現およびマクロファージの浸潤が多く、とくにMCP-1の高発現はPSA再発の独立危険因子のひとつであった。
In vivoおよびin vitroの検討で、AngII/AT1R-PI3K/Akt pathwayが、前立腺癌における MCP-1の発現制御機構のひとつであることが示された。
これらは高悪性度の前立腺癌、とくにCRPCに対する新規の治療標的となり得る可能性が示唆された。

文責 城武 卓

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.24

Transumbilical approach for laparo-endoscopic single-site adrenalectomy: Initial experience and short-term outcome
Akira Miyajima, Seiya Hattori, Takahiro Maeda, Masanori Hasegawa, Toshikazu Takeda, Eiji Kikuchi, Hiroshi Asanuma, Ken Nakagawa and Mototsugu Oya Int J Urol. 2011 Dec 14. [Epub ahead of print]

題名

臍部単孔式腹腔鏡下副腎摘除術の初期経験

背景

腹腔鏡下手術の利点は術後疼痛の少なさ、傷の小ささ、入院期間の短さ、社会復帰の早さにおいて広く認知され、開腹手術に対するもう一つの選択肢として既に確立された手術である。単孔式腹腔鏡下手術(Laparo-Endoscopic Single-site Surgery: LESS)は一か所の傷からアプローチする方法で、人間が生まれつき持つ唯一の傷である臍を介してLESSを施行することで、究極の理想である「傷のない手術」が可能となる。これまでLESSによる胆嚢摘出、虫垂切除については報告が散見されるものの、その技術的難度の高さから確立された手術であるとは言い難い。一方、欧米では臍を介するLESSは泌尿器科領域で増加傾向にあり、我が国においてもその需要は増加するものと想定される。しかしながら、副腎腫瘍に対するLESSの報告は未だ数少なく、その安全性ならびに有用性については十分になされていないのが現状である。

目的

当院で2009年より導入した臍部単孔式腹腔鏡下副腎摘除術の初期30例の手術成績について検討を行った。手術は全例臍部に2p径のSILSポート(Covidien社)を挿入して経腹腔アプローチで行った。内視鏡は5o径のFlexible Scope(オリンパス社)、鉗子は先端の屈曲可能なEndoGrasp(Covidien社)を使用。腹腔鏡下手術技術認定医(A.M.)が全例で術者を行い、術式の安全性ならびに有用性について検討を行った。

結果

適応した疾患は、副腎腺腫17例、褐色細胞腫7例、その他の腫瘍6例。平均手術時間は120.1分、平均腫瘍径は27.3mm。腫瘍の性状や局在ならびに腫瘍径が手術成績に影響を与えることはなかった。気腹時間は初期15例で95.8分であったが、後期15例では70.5分と短縮していた。全30例の気腹時間では有意な学習効果を認め、術者がCross-Over Techniqueを習得するにつれ手術時間が短縮する傾向にあった。合併症は1例においてのみ術後後腹膜血腫を認めたが保存的に軽快した。

結論

臍部単孔式腹腔鏡下副腎摘除術は、いずれの症例でも安全に施行可能であり、患者への恩恵は大きいものである。手術機器の更なる改良に伴って本術式も改良され普及発展するものと考えている。

文責 宮嶋 哲

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Prognonstic impact of renin-angiotensin system blockade in localised upper-tract urothelial carcinoma
Tanaka N, Miyajima A, Kikuchi E, Matsumoto K, Hagiwara M, Ide H, Kosaka T, Masuda T, Nakamura S and Oya M
Br J Cancer 2011 Dec 20. Epub ahead of print]

目的

様々な癌腫の基礎研究においてRenin-angiotensin系阻害を介した抗腫瘍効果が報告されているが、臨床におけるRenin-angiotensin系阻害薬(ACE阻害薬及びARB)と予後の検討は少ない。我々は上部尿路上皮癌患者の術後再発におけるRenin-angiotensin系阻害の有用性を後ろ向きに検討した。

方法

腎尿管全摘術が施行された上部尿路上皮癌患者の内、詳細な降圧剤内服(Ca拮抗薬・βブロッカー・利尿剤・ACE阻害薬・ARB)の調査が可能であった279例(男性207:女性72)を対象とした。平均観察期間は3.4年であった。臨床病理組織学的因子に加え降圧薬内服の詳細と予後を統計学的に検討した。

結果

観察期間に61例に術後再発が認められた。降圧剤投与が確認された113例中48例にACE阻害薬又はARBが投与されていた。単変量解析ではgrade、pT、LVI、周術期化学療法施行の有無と共にACE阻害薬・ARB内服の有無が有意に術後再発と関連した。多変量解析の結果、pT3(HR3.50、p=0.001)・LVI陽性(HR2.10、p=0.013)と共にACE阻害薬・ARB内服の有無(HR3.14、p=0.027)がそれぞれ術後再発に関連する独立した危険因子であった。5年無再発生存率はACE阻害薬・ARB内服群:93.0%、対照群:72.8%であり、ACE阻害薬・ARB内服群で有意に再発抑制が確認された(p=0.008)。

結論

上部尿路上皮癌患者へのRenin-angiotensin系阻害を介した再発予防効果の可能性が示唆された。

文責 田中 伸之

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.23

Surgical and Chemotherapeutic Options for Urachal Carcinoma: Report of Ten Cases and Literature Review
Satoshi Yazawa, Eiji Kikuchi, Toshikazu Takeda, Kazuhiro Matsumoto, Akira Miyajima,
Ken Nakagawa, Mototsugu Oya
Urol Int. 2011 Dec 3, Epub ahead of print

目的

尿膜管癌は比較的希な疾患であり、早期には無症状で発見が難しいこと、有効な治療手段が限られること、局所再発率が高いことから、その予後は不良である。我々は当院での尿膜管癌症例をレビューし、その治療成績に関して検討を行った。

対象と方法

1998年から2009年の間、慶應義塾大学病院で診断された尿膜管癌10例を対象とし、特に外科的治療、抗癌化学療法に焦点をあて後方視的に検討を行った。

結果

年齢中央値は55.0歳、TNM分類はstage I:1例、stage II:4例、stage III:4例、 stage IV:1例であった。9例に外科的治療を施行、内5例に膀胱部分切除術を施行し、4例に膀胱全摘除術を施行した。観察期間中央値は3.5年で、2年生存率は87.5%であった。癌なし生存6例、サルベージ化学療法を3例に、アジュバント化学療法を2例に施行した。特にCPT-11+TS-1(IRIS)を施行した1例は長期のstable diseaseを認め、転移を認めてから3年以上の長期生存が得られた。

結論

当院で経験した尿膜管癌10例を後方視的に検討した。本症に対する抗癌化学療法の標準的なレジメンは確立されてはいないものの、IRISを施行した症例では長期生存が得られた。

文責 矢澤 聰

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.22

Transumbilical laparo-endoscopic single site surgery for adrenal cortical adenoma inducing primary aldosteronism: initial experience
Miyajima A, Maeda T, Hasegawa M, Takeda T, Ishida M, Kosaka T, Kikuchi E, Nakagawa K, Oya M.
BMC Res Notes. 2011 Sep 24;4(1):364. [Epub ahead of print]

題名

副腎腫瘍(原発性アルドステロン症)に対する臍部単孔式腹腔鏡下副腎摘除術の初期経験

要旨

単孔式腹腔鏡下手術(laparo-endoscopic single-site surgery:LESS)はその技術的難易度の高さから未だその普及定着の域には達していない。特に臍を介したLESSを施行することで「傷のない手術」が実現可能となり美容的観点における患者へもたらす恩恵は大きい。ここ数年の手術機器の技術革新と改良に伴って消化器外科ならびに産婦人科領域ではLESSの症例数は増加傾向にある。その中で,副腎腫瘍は切開創を大きくすることなく,組織の体腔外への摘出が可能であり,臍部単孔式腹腔鏡下手術こそ副腎摘除術に適した術式と言える。当院では2009年10月より、副腎腫瘍に対してLESS-Adrenalectomy(LESS-A)を導入し,原発性アルドステロン症(PA)に対してこれまで12例を経験した。本研究では、通常の腹腔鏡下副腎摘除術(LA)24例と比較したCase control studyである。LESS-Aの平均手術時間はLAより長い傾向を認めたが、統計学的に有意な差を認めなかった。さらに出血量、鎮痛剤使用量、入院期間、傷に対する満足度でも両者において有意な差を認めなかった。
臍を介した単孔式腹腔鏡下副腎摘除術は安全で有用な術式と考えられた。

文責 宮嶋 哲

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Acquired platinum resistance enhances tumour angiogenesis through angiotensin II type 1 receptor in bladder cancer.
Tanaka N, Miyajima A, Kosaka T, Miyazaki Y, Shirotake S, Shirakawa H, Kikuchi E, Oya M.
Br J Cancer 2011 Oct 4. [Epub ahead of print]

目的

転移のある浸潤性膀胱癌に対しては現在Cisplatin (CDDP)を中心とする化学療法がおこなわれているが、その治療効果は不十分であり、部分寛解を得た患者であってもその後進行する。有効な代替治療は確立されておらず、様々な新規レジメンが考案されている。当教室では泌尿器科癌においてAngiotensin II (Ang II)受容体の一つであるAT1Rを介した血管新生亢進とその阻害薬Angiotensin II receptor blocker (ARB)を用いた抗腫瘍効果について報告を重ねてきた。今回は、CDDP耐性膀胱癌におけるセカンドラインとしてのARBの有用性を検討した。

方法

本研究の前実験としてヒト膀胱癌細胞株5637、T24にIn vitroでCDDPを持続的に暴露しCDDP耐性株の樹立を行った。次にCDDP耐性の浸潤性膀胱癌におけるARBを介した新規治療の可能性をIn vivoで検討するとともに、CDDP耐性下でのAng II依存性の血管新生を免疫組織学的評価・Western Blot法・ELISA等用い検討した。

結果

CDDPへの耐性獲得後のAT1Rの発現変化を検証するため、5637及びT24両群について各細胞株におけるCDDP耐性株である5637PR及びT24PR細胞を用いAT1R発現の変化を検討した。Western Blot法によるAT1R発現の変化の比較では5637PR及びT24PRいずれの細胞株においてもParent's cellに比べ AT1Rの発現上昇が確認された。次にCDDP耐性獲得に伴うAng II刺激依存性のVEGFの発現変化をELISAにより検討したところ、Ang IIにより誘導される培養上清中のVEGF発現はParent's cellと比較しCDDP耐性細胞株では有意に高かった。マウス皮下腫瘍モデルを用いて検討でも、T24と比較しCDDP耐性株であるT24PR群では有意にAT1R及びVEGF発現亢進が認められた。T24PRマウス皮下腫瘍モデルを用いて、CDDP耐性膀胱癌におけるARBの抗腫瘍効果の検討を行ったところ、コントロール群と比較しARB投与群では約50%の腫瘍縮小が認められた。

結論

CDDP耐性下の膀胱癌では、AT1R発現上昇を介した血管新生亢進の可能性よりARB投与はその有用性が示唆された。

文責 田中 伸之

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.21

Low-dose docetaxel enhances the sensitivity of S-1 in a xenograft model of human castration resistant prostate cancer
Masanori Hasegawa, Akira Miyajima, Takeo Kosaka, Yota Yasumizu, Nobuyuki Tanaka, Takahiro Maeda, Suguru Shirotake, Hiroki Ide, Eiji Kikuchi and Mototsugu Oya
Int J Cancer 2011, Epub ahead of print

表題

去勢抵抗性前立腺癌の異種移植モデルにおいて、低用量ドセタキセルはS-1の感受性を増強させる。

背景

現在、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)に対してドセタキセル(DOC)が投与されているが、高齢の患者や進行症例への投与がしばしば困難であり、DOC抵抗性となった場合の有効な治療法は確立されていない。そこで我々は、5-fluorouracil(5-FU)系経口抗癌剤であるS-1に注目した。S-1は5-FUのプロドラッグであるtegafurにgimeracilとpotassiun oxonateを含有する合剤である。Gimeracilは肝臓での5-FU分解を強力に阻害することで5-FUの血中濃度を上昇させ、potassiun oxonateは5-FUのdose limiting factorである消化管障害を軽減することが可能である。

目的

本研究では、CRPCに対しS-1単剤の抗腫瘍効果、およびS-1に低用量のDOCを併用した際の抗腫瘍効果の増強作用の有無について検討した。一般に5-FUの標的酵素であるthymidylate synthase(TS)の高発現は5-FUへ抵抗性を示すとされており、本研究ではTSの発現レベルに注目し、作用機序について検討した。

方法

アンドロゲン依存性前立腺癌(ADPC)患者とCRPC患者から得られた臨床検体においてTSの発現につき免疫染色で評価した。In vitroでは前立腺癌細胞株はLNCaP(アンドロゲン依存性)とC4-2(去勢抵抗性)を用い、TS発現についてはwestern blotおよびreal time PCR、細胞周期解析はBrdU染色によるフローサイトメトリーで解析を行った。In vivoではC4-2皮下腫瘍モデルを用いた。

結果

臨床検体のTS発現は、CRPC群ではADPC群より有意に低かった。C4-2はLNCaPよりTSが低く、5-FUに高い感受性を示し、S-1はCRPC患者に対してより有効である可能性が示唆された。C4-2皮下腫瘍モデルにおけるS-1単剤投与は高容量(tegafur換算で5mg/kg/day、2週間経口投与)、低用量(3mg/kg/day、臨床での投与量と同等)ともに腫瘍増殖を有意に抑制した。低用量S-1(3mg/kg/day)に、単剤で抗腫瘍効果を示さない低用量DOC(2mg/kg、初日腹腔内投与、臨床での投与量と同等)を併用すると有意にS-1の抗腫瘍効果を増強したことから、低用量S-1と低用量DOCの相乗的抗腫瘍効果がin vivoで示された。In vitroでは、C4-2において5-FUとDOC併用は相乗的な殺細胞効果を示し(combination index=0.7)、同条件下でTSはDOCにより有意に低下した。一般にDOCは、微小管に作用しG2/M arrestを起こす代表的な薬剤であり、一方、TSはG1からS期に誘導されるとされているが、G2/M arrestを起こさない低濃度DOC(1、2nM)はG1からS期の細胞周期タンパクであるp53、p21の発現を誘導し、TS発現を抑制した。また、p21の下流にあるCDK4をfascaplysinで阻害したところ、TS発現は低下した。

結論

CRPC患者はADPC患者よりもTS発現が低く、S-1の良い治療対象となる可能性が示唆された。また低用量DOCがG1からS期に作用し、TSの発現低下を誘導することから、低用量DOCの併用は、S-1の有効性を相乗的に高めた。S-1は消化器癌を中心に多くの癌腫への有効性が既に実証されていることから、本研究結果をもとにCRPCに対しても速やかな臨床応用が期待されると共に、S-1は経口投与であるため、患者のQOLの向上も期待される。以上より、S-1単剤、およびS-1と低用量DOCの併用療法はCRPC患者に対して新たな治療法となる可能性が示唆された。

文責 長谷川 政徳

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Intravesical Interleukin-15 Gene Therapy in an Orthotopic Bladder Cancer Model.
Matsumoto K, Kikuchi E, Horinaga M, Takeda T, Miyajima A, Nakagawa K, Oya M.Hum Gene Ther. 2011 Jul 8. [Epub ahead of print]

目的

表在性膀胱癌に対してはBCG膀胱内注入による免疫治療が再発予防の主役を担っているが、長期の免疫誘導は期待できず、膀胱癌に対する新たな免疫療法の確立が望まれる。IL-15は自然免疫系細胞の分化成熟を誘導し、さらに長期の免疫記憶を担うメモリーT細胞の維持に重要であることが知られている。今回、膀胱癌へのIL-15遺伝子導入治療について研究を行った。

方法

MBT−2細胞をマウス膀胱に移植し作成したマウス膀胱癌同所性モデルを用い、膀胱へin situにLacZおよびIL-15遺伝子のlipoplexを膀胱内注入し、腫瘍への導入効率、尿中IL-15濃度の変化、腫瘍重量の推移、および病理組織学的所見を検討した。さらに腫瘍抑制をみとめたIL-15治療群マウスに対し、再度皮下にMBT-2細胞を移植し、抗腫瘍免疫記憶につき検討を行った。

成績

In situでの膀胱内への遺伝子導入では腫瘍巣に強いX-gal染色を認め、遺伝子導入が確認された。またIL-15遺伝子導入により尿中IL-15濃度の上昇を確認した。またIL-15治療群のマウスにおいては、コントロール群に比べ有意に腫瘍増殖抑制効果を認め、さらに生存率の延長を認めた。IL-15治療群の腫瘍周囲には多くのCD8陽性細胞の浸潤を認めた。またIL-15治療群のマウス皮下にRe-challengeしたMBT-2細胞の増殖速度は、新たなコントロール群に比べ有意に抑制され、またCTLアッセイによりその抗腫瘍免疫はMBT-2細胞に特異的であることが確認された。

結論

In situによるIL-15遺伝子治療にて、効率的な遺伝子導入とIL-15の発現が確認され、またマウス膀胱癌に対する腫瘍増殖抑制を認めた。その抗腫瘍効果には、CD8陽性T細胞が関与しているものと考えられた。さらにRe-challengeされた皮下腫瘍が拒絶されたことより、腫瘍特異的な免疫記憶を獲得している可能性が示唆された。

文責 松本一宏

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Neoadjuvant Gemcitabine Plus Cisplatin for Muscle-invasive Bladder Cancer
Gou Kaneko, Eiji Kikuchi, Kazuhiro Matsumoto, Jun Obata, So Nakamura, Akira Miyajima and Mototsugu Oya
Jpn J Clin Oncol, 7: 908-914, 2011

目的

筋層浸潤性膀胱癌に対する膀胱全摘除術前の化学療法は生存率の改善に寄与すると報告されている。進行性膀胱癌の救済化学療法において、GC療法(Gemcitabine、Cisplatin)はMVAC(Methotrexate、Vinblastine、Doxorubicin、Cisplatin)療法と同等の奏功率、PFS(Progression Free Survival)、OS(Overall Survival)であり、副作用は特に非血液毒性がMVAC療法より軽度であると報告されている(von der Maase et al. J Clin Oncol 2000;18:3068-77、von der Maase et al. J Clin Oncol 2005;23:4602-8)。よって、術前化学療法においてもGC療法の適応が期待されている。DashらによりGC療法はMVACと同等の奏功率であったと報告されている(Dash et al. Cancer 2008;113:2471-7)が、MVAC療法との副作用の差異については検討されていない。

方法

2007年9月〜2011年2月に当院と済生会中央病院で筋層浸潤性膀胱癌の膀胱全摘除術前にGC療法による化学療法を施行した22例を対象とした。Down stage rate(pathological T stageが治療前のclinical T stageより低下した症例の割合)、drug delivery rate(計画された投与量と比べ実際に投与された抗癌剤の割合)、副作用を評価した。副作用はNational Cancer Institute Common Toxicity Criteria version 4.0.を用いて評価した。対照群として2004年6月〜2008年10月にMVAC療法による術前化学療法を施行した9例を比較検討した。

結果

GC療法群は平均1.9コースが施行され、drug delivery rateはGemcitabine 83.8%、Cisplatin 95.4%であった。pT0、<pT2へのDown stageはそれぞれ50.0%、63.6%であった。Grade 3以上の副作用は好中球減少、貧血、血小板減少、有熱性好中球減少症をそれぞれ14.3%、2.4%、21.4%、2.4%に認めたが、非血液毒性は認められなかった。また、26.2%に血小板増多を認めた。
 MVAC群は平均2.3コースが施行され、drug delivery rateはMethotrexate 59.6%、Vinblastine 69.8%、Doxorubicin 100%、Cisplatin 88.6%であった。pT0、<pT2へのDown stageはそれぞれ22.2%、44.4%であった。Grade 3以上の副作用は好中球減少、貧血、血小板減少、嘔気をそれぞれ19.1%、9.5%、4.8%、28.6%に認めた。

結論

筋層浸潤性膀胱癌に対する術前化学療法において、GC療法はMVACと同等のDown stage rateであり、副作用では非血液毒性が少なく、術前化学療法としてGC療法は有用であると考えられた。

文責 金子剛

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