業績紹介

論文紹介

慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.10

Hiroki Ide, Eiji Kikuchi, Hidaka Kono, Hirohiko Nagata, Akira Miyajima, Ken Nakagawa, Takashi Ohigashi, Jun Nakashima, and Mototsugu Oya: Docetaxel in Combination with Prednisolone for Hormone Refractory Prostate Cancer. Jpn J Clin Oncol, 2009 Oct 22.

要旨

目的

ホルモン抵抗性前立腺癌に対するドセタキセル、プレドニゾロン併用療法の効果および有害事象について評価する事を目的とした。

対象と方法

2006年から2008年の間に当院においてホルモン抵抗性前立腺癌に対し、ドセタキセル、プレドニゾロン併用療法(ドセタキセル75mg/m2 3週毎およびプレドニゾロン10mg 連日投与) を施行した20例を対象とした。

結果

平均投与回数は5.5回、平均奏効期間は4ヶ月であり、20例中9例(45%)に50%以上のPSA減少を認めた。平均施行回数、骨転移の有無および転移部位と奏効例との間には有意な関連が認められた。また、奏功例中、3例に一時的なPSA上昇を認めた。

Grade3以上の有害事象として、白血球減少を16例(80%),好中球減少を17例(85%)に認め、1例に間質性肺炎を認めたが、観察期間中に、治療関連死を認めなかった。

結論

日本人においてホルモン抵抗性前立腺癌に対し、ドセタキセル75mg/m2 3週毎およびプレドニゾロン10mg 連日投与は効果的であり、且つ安全に施行できた。また、奏功例中、3例に一時的なPSA上昇を認めたため、効果判定は慎重に検討するべきであることが、示唆された。また、間質性肺炎は稀な合併症であるが、発生の危険を念頭におくべきである。

文責 井手広樹

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Hiroki Ide, Jun Nakashima, Hidaka Kono, Hirohiko Nagata, Eiji Kikuchi, Akira Miyajima, Ken Nakagawa and Mototsugu Oya: Prognoastic Stratification in Patients who Received Hormonal Therapy for Prostate Specific Antigen Recurrence after Radical Prostatectomy. Jpn J Clin Oncol, 2009.

要旨

目的

前立腺全摘後PSA再発を認め、ホルモン療法を施行した患者の予後因子を解析する事を目的とした。

対象と方法

当院において前立腺癌に対し、前立腺全摘後PSA再発を認め、ホルモン療法を施行した患者55例を対象とし、非再燃生存期間における予後因子を解析した。

結果

多変量解析において、primary Gleason grade 4以上 および PSA 倍加時間6ヶ月未満 が独立した予後因子であった。

さらに低リスク群(primary Gleason grade 3以下 および PSA 倍加時間6ヶ月以上)、中間リスク群 (primary Gleason grade 4以上 または PSA 倍加時間6ヶ月未満)、および高リスク群 (primary Gleason grade 4以上 および PSA 倍加時間6ヶ月未満)に分けて解析を行った。その結果、中間リスク群および高リスク群において、ホルモン療法開始時PSA 2未満の患者が、2以上の患者より、非再燃率が有意に高かった。

結論

Primary Gleason grade 4以上 および PSA 倍加時間6ヶ月未満が術後PSA再発に対し、ホルモン療法を施行した患者の非再燃生存期間における独立した予後因子であった。

また、中間リスク群および高リスク群では、術後PSA再発を認めた場合、早期にホルモン療法を施行するべきであることが、示唆された。

文責 井手広樹

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.9

Kunimitsu Kanai, Eiji Kikuchi, Shuji Mikami, Eriko Suzuki, Yasumitsu Uchida, Kiichiro Kodaira, Akira Miyajima, Takashi Ohigashi, Jun Nakashima and Mototsugu Oya: Vitamin E succinate induced apoptosis and enhanced chemosensitivity to paclitaxel in human bladder cancer cells in vitro and in vivo. Cancer Sci., 2009 Sep 14.

要約

目的

Vitamin E succinate (α-tocopherol succinate) は各種癌細胞において抗腫瘍効果を示すことが報告されている。今回我々は膀胱癌細胞に対するvitamin E succinateの抗腫瘍効果の検討、さらに抗癌剤であるpaclitaxelとの併用療法について検討した。

方法

ヒト膀胱癌細胞株KU-19-19細胞・5637細胞を用いて、種々の濃度のvitamin E derivatives (α-tocopherol [α-TOH]、α-tocopherol acetate [α-TOA]、α-tocopherol succinate [α-TOS]、γ-tocotrienol [γ-T3])およびpaclitaxelを加え24-72時間培養した。細胞増殖障害はWST-1 assay、細胞周期はBrdU・アポトーシスはTdTを用いたフローサイトメトリーで解析した。相乗効果のメカニズムとしてNF-κBに着目してTrans-AM NF-κB p65 assay、Western bolt、siRNAを用いて評価した。さらにKU-19-19細胞を用いて皮下腫瘍モデルを作成し抗腫瘍効果の検討と、摘出した腫瘍塊をHE染色、TUNEL染色、Ki-67染色で評価した。

結果

KU-19-19・5637細胞に対してα-TOSとγ-T3では時間・濃度依存性に細胞増殖抑制効果が認められたが、α-TOHとα-TOAでは細胞増殖抑制効果が認められなかった。併用療法ではα-TOSとpaclitaxelの併用でKU-19-19・5637細胞共に相乗効果が認められた。α-TOS単剤でもアポートシスを誘導し、α-TOSとpaclitaxelの併用でその効果は増強された。相乗効果のメカニズムとしてα-TOSにはNF-κB抑制効果があり、paclitaxelにより活性化されたNF-κBがα-TOSとの併用で抑制されること、NF-κB関連シグナル伝達においてα-TOSはpaclitaxelとの併用でIκBαのリン酸化を抑制すること、またpaclitaxelで誘導されたc-IAP1はα-TOSとpaclitaxelの併用で抑制されることを確認した。皮下腫瘍モデルでは4週間後の腫瘍体積は併用群(α-TOS+paclitaxel)で有意な抑制効果を認めており、また腫瘍塊の免疫染色でも併用群で有意なアポトーシス細胞の増加(TUNEL染色)と細胞増殖の抑制(Ki-67染色)が認められた。

結論

膀胱癌細胞においてα-TOSとpaclitaxelの併用療法はin vitroおよびin vivoで相乗効果が確認できた。そのメカニズムの一つとしてpaclitaxelによるNF-κBの活性化をα-TOSが抑制することが挙げられた。

文責 金井邦光

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Role of Pelvic Lymph Node Dissection in Lymph Node-Negative Patients with Invasive Bladder Cancer

Suguru Shirotake, Eiji Kikuchi, Kazuhiro Matsumoto, Satoshi Yazawa, Takeo Kosaka, Akira Miyajima, Ken Nakagawa, Mototsugu Oya
Jpn J Clin Oncol. 2009 Nov 3

要約

背景及び目的

膀胱癌に対する膀胱全摘術施行症例で、リンパ節転移陰性例における骨盤内リンパ節郭清の意義について詳細に検討された報告は少ない。今回われわれは1987年1月から2008年3月までの間に膀胱癌に対して膀胱全摘術および骨盤内リンパ節郭清を施行した症例を解析し、その意義について検討した。

患者と方法

169症例において膀胱癌に対して膀胱全摘術を施行した。平均観察期間は64ヶ月(1-253ヶ月)であった。リンパ節転移陽性例(pN(+))は16症例、リンパ節転移陰性例(pN(-))は91症例であった。残りの62症例は、リンパ節転移陰性と診断されたが、リンパ節数が明確でなかった(pN(x))。この3群間における癌特異的生存率の解析を行い、特にリンパ節転移陰性例(pN(-))のリンパ節摘出数に着目して検討を行った。

結果

平均リンパ節摘出数はpN(+)群で12.9個、pN(-)群で10.2個であった。pN(-)群の91症例において、多変量解析を行い、癌特異的生存率における独立危険因子はT3-4stage (p=0.0276)とリンパ節摘出数9個未満(p=0.0108)であった。全症例の中のT3-4stage 83症例における各群の5年癌特異的生存率の検討では、リンパ節摘出数9個未満のpN(-)群が38.8%であり、pN(+)群(40.8%)およびpN(x)群(45.1%)と類似したKaplan-Meier曲線を示した。

結論

膀胱癌に対する膀胱全摘術および骨盤内リンパ節郭清におけるリンパ節転移陰性例において、少なくとも9個以上のリンパ節を摘出するべきであり、特にpT3-4stageの浸潤性膀胱癌においては診断的意義だけでなく治療的意義も有することが示唆された。

文責 城武 卓

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.8

Increased RANKL expression is related to tumour migration and metastasis of renal cell carcinomas.

Mikami S, Katsube K, Oya M, Ishida M, Kosaka T, Mizuno R, Mochizuki S, Ikeda T, Mukai M, Okada Y.
J Pathol. 2009 Aug;218(4):530-9.

抄録要約

目的

腎細胞癌は高頻度に骨に転移することが知られている。骨転移は腎細胞癌の治療を困難にする原因であり患者のQOLを低下させる。しかし、腎細胞癌の骨転移の機構に関しては不明な点が多い。癌が骨転移巣を形成するためには、既存の骨組織を破壊する必要がある。本研究では、骨を破壊する破骨細胞を誘導する因子(receptor activator of nuclear factor kappa B ligand (RANKL)) , その受容体receptor activator of nuclear factor kappa B (RANK), RANKLを阻害する因子であるOPGに着目し、RANKL/RANK/OPGと腎細胞癌の浸潤・転移および予後との関連およびその意義を検討した。

対象と方法

ヒト腎細胞癌組織24例におけるRANKL/RANK/OPG mRNA発現をreal-time PCR法によって調べた。ヒト腎細胞癌組織96例におけるRANKL/RANK/OPG蛋白発現は免疫組織学的に検討するとともに、腎細胞癌の骨転移、予後との関連を統計学的に検討した。腎細胞癌由来の細胞株Caki-1におけるRANKL/RANK/OPG役割を検討するため、Caki-1にRANKL, OPGを加えて培養し、その移動能の変化を調べた。

結果

最も頻度の高い腎細胞癌である淡明細胞癌においてRANKLが高発現しており、非淡明細胞癌(乳頭状腎細胞癌、嫌色素細胞癌)ではRANKL発現が低かった。RANK, OPG発現と組織型には有意な相関はみられなかった。RANKLの発現レベルは原発巣の進展度、遠隔転移、組織学的異型度等の悪性度と相関していた。骨および他臓器の転移巣では、RANKL, RANKが高発現していた。RANKLを添加するとCaki-1の移動能が亢進し、OPG添加によりその作用が抑制された。RANKL, RANK発現が高くOPG発現が低い症例は高頻度に骨転移を来たし、予後不良であった。

結論

腎細胞癌ではRANKL/RANK/OPGは癌細胞の移動能を制御することで骨のみでなく他臓器への転移にかかわっていることが判明した。そのため、RANKL/RANK/OPGの作用を特異的に制御することが腎細胞癌患者の有効な治療法の開発につながることが示唆された。

文責 三上修治

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Ets-1 and hypoxia inducible factor-1α inhibition by Angiotensin II type-1 receptor blockade in Hormone-Refractory Prostate Cancer

Takeo Kosaka, Akira Miyajima, Suguru Shirotake, Eiji Kikuchi, Masanori Hasegawa,
Shuji Mikami, Mototsugu Oya
Prostate. 2009 Sep 16

要約

背景及び目的

レニンーアンギオテンシン系(RAS)が悪性腫瘍の血管新生の制御に関与するという知見が集積されつつある。我々はホルモン不応性前立腺がん(HRPC)において、アンギオテンシン1型受容体(AT1R)の発現が、ホルモン感受性前立腺癌に比較して有意に更新していること、ならびに、その阻害剤(AT1R blocker: ARB)の投与により、抗血管新生作用を介したホルモン不応性前立腺がんにおける抗腫瘍効果について報告してきた (Kosaka T. Miyajima A. Prostate 2007)。しかし、癌細胞におけるアンギオテンシンU(Ang U)の下流において作用する転写因子に関する検討は未だなされていない。本研究は、前立腺癌でのAngUの下流における、血管新生に関与する転写因子の発現の検討を目的とする。

方法

3種類の前立腺癌細胞株(LNCaP, C4-2, C4-2AT6)を対象とした。

C4-2AT6は当教室において、C4-2をアンドロゲン除去血清下に6か月間培養することで樹立したHRPC細胞株である。AngU投与におけるEts-1, HIF-1αの核内の発現をウェスタンブロット法で検討した。培養上清のVEGFはELISA法で定量した。

結果

すべての細胞株において、AngUによる腫瘍増殖効果は認めなかった。C4-2AT6は他の細胞株に比較して、有意に高いAT1Rの発現を認め、核内におけるEts-1, HIF-1αの発現上昇を伴っていた。定常酸素濃度下における、培養上清のVEGFもC4-2AT6において有意に高かった。AngUはC4-2とC4-2AT6において有意にVEGFの産生を亢進したが、LNCaPではその作用は認められなかった。AngU投与は、C4-2とC4-2AT6においてEts-1とHIF-1αの核内での発現を亢進させ、ARBはその誘導を抑制した。LNCaPでは、AngUによるEts-1、HIF-1αの誘導を認めなかった。

結論

ARBによるEts-1、HIF-1αの制御を介した、血管新生抑制作用が明らかとなった。これらの結果は、ARBを血管新生抑制剤として臨床応用する際の、分子基盤を提供するものと考えられる。


レニンーアンギオテンシン系と血管新生、特にホルモン不応性前立腺がんにおけるARBによるRASの制御は、Ets-1、HIF-1αの制御によるものであることを示した論文である。また、今回我々が、長期間(6か月)のアンドロゲン除去下の培養で樹立したC4-2AT6細胞株は、in vitro、in vivoにおいて血管新生が亢進しており、HRPCの進展モデルとして、非常に有用な実験モデルを提供するものと考えられる。

文責 小坂 威雄

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Ishida M, Mikami S, Kikuchi E, Kosaka T, Miyajima A, Nakagawa K, Mukai M, Okada Y, Oya M: Activation of the aryl hydrocarbon receptor pathway enhances cancer cell invasion by up-regulating the MMP expression and is associated with poor prognosis in upper urinary tract urothelial cancer. Carcinogenesis 2009 Sep 15

要約

目的

芳香族炭化水素受容体(Aryl hydrocarbon receptor: AhR)は外因性生理活性物質の代謝を担っており、リガンドの結合により活性化し、シトクロームP450(cytochrome P450: CYP)などの代謝酵素を誘導する。CYPは外因性生理活性物質を代謝し、発癌物質の活性化や活性酸素の産生に関与することにより、発癌との関連が示唆される。AhRはいくつかのシグナル伝達系に影響し、細胞周期やアポトーシスの制御など様々なカスケードを調節する。また、AhRの活性化によりMMPの発現が上昇し、癌の浸潤に関与することも報告されている。

尿路上皮癌の発生にタバコなどに含まれる発癌物質が関与するとされているが、AhRと尿路上皮癌の関連については明らかにされていない。また、上部尿路上皮癌の予後予測に有用な分子マーカーは確立されていない。そこで、本研究では上部尿路上皮癌におけるAhRの発現を免疫組織学的に検討し、AhRの活性化と浸潤能の関連をin vitroで検討した。

対象と方法

上部尿路上皮癌切除検体209例のパラフィン切片を用いてAhRの発現を免疫組織学的に検討した。AhRの発現と臨床病理学的因子との相関を検討し、多変量解析で予後との関連を調べた。続いて、AhRのリガンドである2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ダイオキシン(TCDD)をT24に添加して培養し、CYP、MMP発現の変化を、定量PCR法を用いて検討した。TCDDによるAhRの活性化がT24の浸潤能に与える影響を、Matrigel™を用いて測定した。さらに、siRNAを導入することでAhR発現を抑制し、CYPおよびMMPの発現の変化、浸潤能への影響も検討した。

結果

AhRの発現は病期、組織学的悪性度、脈管浸潤およびリンパ節転移と有意に相関した。また、AhRの発現は無増悪生存率および疾患特異的生存率を予測する独立した因子であった。TCDDの投与によりT24のAhRの発現は上昇し、CYP1A1、CYP1B1も上昇した。また、TCDDはMMP-1およびMMP-9の発現上昇を介してT24細胞の浸潤能を亢進させた。さらに、AhR に対するsiRNA導入により、T24のAhR、CYP1A1、CYP1B1、MMP-1、MMP-2、MMP-9の発現が低下した。siRNAを導入したT24は、コントロールと比較して有意に浸潤能が低下した。

結論

これらの結果は、尿路上皮癌の浸潤においてAhRが重要な役割を果たしていることを示している。また、AhRが上部尿路上皮癌の予後を予測する因子として有用であることが示唆された。

文責 石田 勝

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Ishida M, Nakashima J, Hashiguchi A, Mizuno R, Shinoda K, Kikuchi E, Miyajima A, Nakagawa K, Mukai M, Oya M: Are predictive models for prostate cancer volume linically useful in localized prostate cancer? International Journal of Urology. 2009

要約

目的

前立腺癌において、術前予測腫瘍体積と実測腫瘍体積との関連性、および病理学的病期の術前予測における予測腫瘍体積の有用性を検討した。

対象と方法

限局性前立腺癌に対し、根治的前立腺摘除術を施行した196人を対象とした。D'Amicoら(Vca)およびAlschbajaら(estimated PCvol)の方法で算出した予測腫瘍体積を含む様々な術前因子と病理組織学的因子との関連を検討した。

結果

実測腫瘍体積は、Vca、estimated PCvolそれぞれと有意に相関したが相関係数は0.46および0.35にすぎなかった。PSA、PSA density、primary Gleason score、Vca、Vca fx(VcaをTRUSによる前立腺容量で除した値)estimated PCvolは局所浸潤癌において有意に高く、MRI所見も病理学的病期と有意に相関した。多変量解析においては、VcafxおよびMRIの所見が、病理学的病期の予測に有用な因子であった。しかしながら、ROC分析では、VcafxとMRI所見の組み合わせは、すでに報告されているGleason score、PSA densityおよびMRI所見の組み合わせに対する優位性は認められなかった。

結論

Vcaおよびestimated PCvolは実測腫瘍体積と有意に相関したが、これらの方法は正確に腫瘍の体積を予測するには限界があった。VcafxおよびMRI所見は、局所浸潤癌の有意な予測因子であったが、これらの組み合わせは病理学的病期の予測において他の方法を超えるものではなかった。

文責 石田 勝

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.7

Mizuno R, Nakashima J, Mukai M, Okita H, Kosugi M, Kikuchi E, Miyajima A, Nakagawa K, Ohigashi T, Oya M; Tumour length of the largest focus predicts prostate-specific antigen-based recurrence after radical prostatectomy in clinically localized prostate cancer. BJU Int. 2009 Apr 15

要約

目的

前立腺癌において、腫瘍の大きさを表す各変数のPSA再発の予測因子としての有用性を検討した。

患者と方法

前立腺癌に対し、根治的前立腺摘除術を施行した164人を対象とした。前立腺摘出標本における最大腫瘍径、最大腫瘍面積および総腫瘍体積を測定し、他の病理組織学的因子とともにCox比例ハザードモデルを用いた生存分析にてPSA再発の予測因子としての有用性を検討した。

結果

単変量解析においては、病理学的T期、Gleasonスコア、神経周囲浸潤、微小血管浸潤、切除断端陽性、最大腫瘍径、最大腫瘍面積および総腫瘍体積が有意なPSA再発の予測因子であった。多変量解析においては、Gleasonスコア、切除断端陽性および最大腫瘍径が独立したPSA再発の予測因子であった。それら3変数を用いたリスク分類により、PSA再発の可能性のより高い症例を同定できた。

結論

前立腺癌の最大腫瘍径は有意なPSA再発の予測因子であり、前立腺摘出標本における最大腫瘍径の測定は、簡易かつ客観的な方法であると考えられた。最大腫瘍径を組み込んだリスク分類により、PSA再発の可能性のより高い症例を同定できる可能性が示唆された。

文責 水野隆一

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Yasumitsu Uchida, Akira Miyajima, Eiji Kikuchi, Norihide Kozakai, Takeo Kosaka, Masaki Ieda, Keiichi Fukuda, Takashi Ohigashi, and Mototsugu Oya: Renal Damage Inhibited in Mice Lacking Angiotensinogen Gene Subjected to Unilateral Ureteral Obstruction. Urology. 2009 May 9

要旨

目的

アンギオテンシノーゲン遺伝子の欠損(Agt -/-)マウスを用いて、アンギオテンシンII(Ang II)が片側尿管閉塞モデルにおける腎間質の線維化、炎症反応及び尿細管細胞のアポトーシス、再生増殖にどのように関与しているかを検討した。

方法

自然型(WT;C57BL/6)のマウスとAgt -/-マウスの左側尿管を結紮し、2週間後に左右両側の腎臓を摘出した。血清Ang II濃度をRIA(radioimmunoassay)法で測定した。腎組織TGF-β(transforming growth factor-β)濃度をELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法で定量した。腎組織にマッソントリクローム染色を行い、間質の線維化を評価した。腎尿細管の細胞増殖とアポトーシスをPCNA(proliferating cell nuclear antigen)及びssDNA(single-stranded DNA)の免疫染色で解析した。間質への白血球及びマクロファージの浸潤をそれぞれCD45、F4/80の免疫染色で評価した。

結果

Agt -/-マウスはWTマウスよりも血清Ang II濃度が有意に低く(P < .01)、また閉塞腎において腎組織TGF-β濃度が有意に低かった(P < .05)。閉塞腎における腎間質へのコラーゲンの沈着は、Agt -/-マウスの方がWTマウスよりも有意に少なかった(P < .01)。Agt -/-マウスの閉塞腎の方がWTマウスの閉塞腎と比較して、尿細管の細胞増殖は有意に多く認められ(P < .01)、尿細管のアポトーシスは有意に少なかった(P < .01)。白血球とマクロファージの間質浸潤はAgt -/-マウスの閉塞腎の方がWTマウスの閉塞腎よりも有意に少なかった(P < .01, P < .01)。

結論

今回の研究結果は、片側尿管閉塞による腎組織のダメージを防ぐうえで、Ang IIを標的とすることがより良いアプローチであることを示唆するものであった。

文責 内田康光

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.6

Kikuchi E, Fujimoto H, Mizutani Y, Okajima E, Koga H, Hinotsu S, Shinohara N, Oya M, Miki T; the Cancer Registration Committee of the Japanese Urological Association: Clinical outcome of tumor recurrence for Ta, T1 non-muscle invasive bladder cancer from the data on registered bladder cancer patients in Japan: 1999-2001 report from the Japanese Urological Association. Int J Urol. Epub 2009

要約

目的

新規に診断され、TUR-BT術後膀胱内抗癌剤注入、あるいはBCG注入された症例を含めたTa, T1の筋層非浸潤性膀胱癌の日本における大規模な臨床統計の解析を行った。

方法

1999年より2001年までに日本において全国膀胱癌登録が行われた。新規に診断された筋層非浸潤性膀胱癌のデータを集積し、病理組織データがそろっている3237症例を抽出した。患者の中央値は69.9歳であった。

結果

全体として1年、3年、5年非再発率はおのおの77.0%、61.3%、52.8%であった。多変量解析の結果、多発性、腫瘍サイズが3センチを超える、病理病期T1、腫瘍異型度G3、膀胱注入未施行が独立した再発予測因子であった。1710 (52.8%)症例が術後膀胱内注入療法を受けており、その内訳は1314 (76.8%)症例が抗癌剤注入、396 (23.2%)がBCG注入であった。アントラサイクリン系抗癌剤が90%を占める膀胱内抗癌剤注入療法を受けた症例を対象に、多変量解析を行ったところ男性、多発性、腫瘍サイズが3センチを超える、病理病期T1が再発と独立して関連があった。

結論

本邦における全国膀胱癌登録のデータを集積し、解析することは集計期間における膀胱癌の臨床的特徴、治療の傾向、生存率を理解する一助となりうる。今後はより長期間の経過観察のデータを集積し、膀胱癌の腫瘍進展、予後の解析が行われることが望まれる。

文責 菊地栄次

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Toshikazu Takeda, Eiji Kikuchi, Kazuyuki Yuge, Kazuhiro Matsumoto, Akira Miyajima, Ken Nakagawa and Mototsugu Oya: Discontinuance of Bacille Calmette-Guerin Instillation Therapy for Nonmuscle-Invasive Bladder Cancer Has Negative Effect on Tumor Recurrence. Urology. 2009 Feb 19

要約

目的

筋層非浸潤膀胱腫瘍に対するBCG膀胱内注入療法において、副作用の発現・治療の中断と治療効果の関連を検討した。

患者と方法

膀胱腫瘍に対し、経尿道的膀胱腫瘍切除術を施行後に初回BCG膀胱内注入療法を施行した145人(男性122人、女性23人、平均66歳)を対象とした。副作用はmajor(3日以上または38℃以上の発熱。48時間以上の血尿、下部尿路症状。他重篤な副作用)とminor(48時間以内の血尿、下部尿路症状。2日以内の発熱)に分け、副作用の発現・治療の中断と再発および進展との関連を検討した。

結果

副作用は106人(73.1%)に認められ、副作用を認めて治療を中断したのは19人(13.1%)であった(血尿2人、発熱8人、下部尿路症状9人)。再発に関しては治療の中断(p=0.025)と多発腫瘍(p=0.038)が独立した再発予測因子であり、進展に関しては、高年齢(p=0.022)とgrade3(p=0.043)が独立した進展予測因子であった。また、治療を完遂し得た126人のうち、副作用は87人(major19人、minor68人)に認めたが、副作用の発現は再発および進展の有意な予測因子ではなかった。

結論

BCGの膀胱内注入療法において、治療の中断が再発のリスクとなる可能性が示唆されたが、副作用の発現は再発および進展と関連を認めなかった。治療を完遂するために、副作用を軽減する努力が必要であると考えられる。

文責 武田 利和

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Kosugi M, Miyajima A, Kikuchi E, Kosaka T, Horiguchi Y, Murai M, Oya M.: Angiotensin II Type 1 Receptor Antagonist Enhances Cis-dichlorodiammineplatinum-Induced Cytotoxicity in Mouse Xenograft Model of Bladder Cancer. Urology. 2009 Jan 22.

要約

背景

シスプラチンは進行尿路上皮癌に対する治療薬において、一般に使用される最も効果的な薬剤であり、アポトーシスを誘導して細胞毒性を発揮することが知られている。しかし、シスプラチン単剤の治療では十分な抗腫瘍効果は得られていないため、より効果的な他剤との併用治療が期待されている。

我々はこれまで、膀胱癌ならびに腎細胞癌でアンギオテンシンII1型受容体(AT1R)阻害薬の血管新生阻害を介した抗腫瘍効果について検討をおこなってきた。今回の実験では、膀胱癌皮下腫瘍モデルにおいてシスプラチンとAT1R阻害薬(カンデサルタン)の併用投与を行い、カンデサルタンがシスプラチンの抗腫瘍効果に与える影響について検討をおこなった。

方法

ヒト浸潤性膀胱癌細胞株KU-19-19を用いてマウス皮下腫瘍モデルを作成した。マウスをコントロール、カンデサルタン単独治療、シスプラチン単独治療、両剤併用の4群に分け、カンデサルタン治療群では皮下腫瘍が作成された日から継続して2mg/kgのカンデサルタン経口投与が行われ、シスプラチン治療群では腫瘍作成日から5日後より9日後までの5日間、1mg/kgのシスプラチンの腹腔内投与が行われた。皮下腫瘍容積の経時的変化を測定し腫瘍作成日から28日目に皮下腫瘍を採取した。それぞれの群における腫瘍容積,微小血管密度(microvessel density),VEGF発現、アポトーシスの変化について比較検討をおこなった。

結果

カンデサルタン単独, シスプラチン単独, 両剤併用群ともにコントロール群に比して,有意に腫瘍容積が減少しており(コントロール群に対する比:41.9%, 33.8%, 13.2%)、さらに両剤併用群はそれぞれの単独治療群より有意に腫瘍容積が減少していた。微小血管密度はコントロール群、シスプラチン単独群に比して、カンデサルタン単独群、両剤併用群で有意に抑制されていた。カンデサルタン投与群では腫瘍のVEGF発現が有意に抑制されていた。TUNEL染色によりアポトーシスについて検討したところ,コントロール群、カンデサルタン単独群に比して、シスプラチン単独群、両剤併用群で有意な増加を認めた。

結論

膀胱癌皮下腫瘍モデルにおいて、カンデサルタンは腫瘍の血管新生を抑制することにより抗腫瘍効果を発揮し、シスプラチンは腫瘍にアポトーシスを誘導することによって抗腫瘍効果を発揮した。さらに、臨床応用可能な濃度のカンデサルタンの併用投与はアポトーシスへの影響を与えることなく、シスプラチンの抗腫瘍効果を有意に増強した。 膀胱癌に対する新しい治療薬として、AT1R阻害薬の有用性が示唆された。

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.5

Kikuchi E, Margulis V, Karakiewicz PI, Roscigno M, Mikami S, Lotan Y, Remzi M, Bolenz C, Langner C, Weizer A, Montorsi F, Bensalah K, Koppie TM, Fernandez MI, Raman JD, Kassouf W, Wood CG, Suardi N, Oya M, Shariat SF.: Lymphovascular Invasion Predicts Clinical Outcomes in Patients With Node-Negative Upper Tract Urothelial Carcinoma. JCO. Epub 2008

要約

目的

上部尿路上皮腫瘍に対する根治的腎尿管全摘の国際的大規模な症例を用いた壁内脈管浸潤(LVI)と再発、生存との関連の評価。

患者と方法

13施設より1453例の症例が集積された。病理スライドは厳格な基準に従い、泌尿器病理医により再評価された。内皮で覆われた腔内に腫瘍細胞が存在することによりLVIを定義した。

結果

LVIは349症例(24%)に認められた。LVIは病理病期、異型度、腫瘍壊死の存在、腫瘍構築、リンパ節転移の有無と強い関連を認めた(p<0.001)。LVIは疾患の再発、生存率を予測する独立した予後因子であった(p<0.001)。病理病期、異型度、リンパ節転移の有無を含んだ基本解析モデルにLVIを加えることで、再発、生命予後予測はわずかに改善された(おのおの1.1%, p=0.03および1.7%, p<0.001)。リンパ節転移を認めない症例およびリンパ節郭清を行っていない症例おいて(N=1313)、基本解析モデルにLVIを加えることで、再発、生命予後予測は有意に改善された(おのおの3%, p<0.001)。対してLVIはリンパ節転移陽性症例(N=140)においては再発、生命予後との関連を認めなかった。

結論

LVIは上部尿路上皮腫瘍に対する根治的腎尿管全摘術後の非転移症例において臨床経過を予測する独立した予後因子であった。LVIを評価することは根治的腎尿管全摘術後に集学的治療を施行すべき症例を同定することの一助になるかもしれない。より大規模な検討を踏まえて、LVIは上部尿路上皮腫瘍のステージングに含まれるべきであろう。

文責 菊地栄次

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Preoperative Prognostic Nomogram for Renal Cell Carcinoma Based on TNM Classification. Kent Kanao, Ryuichi Mizuno, Eiji Kikuchi, Akira Miyajima, Ken Nakagawa, Takashi Ohigashi, Jun Nakashima and Mototsugu Oya J Urol. 2009 Feb;181(1)

要旨

目的

近年多くの悪性腫瘍予後予測ノモグラムが作成されているが、腎細胞癌の術後生存率を予測するノモグラムは存在しない。転移を有する症例も含め、腎細胞癌の手術適応患者に対し、術前に予後を予測することはインフォームドコンセントを得るためにも重要であると考えられる。一方、TNM分類は病期分類として、現在広く用いられており、予後予測に対する有用性も多くのエビデンスが存在する。そこで今回我々は、TNM分類を用い、腎細胞癌患者の癌特異生存率を術前に予測するノモグラムを作成した。

対象と方法

当施設で腎細胞癌に対し腎摘除術を受けた545例を対象とした。2002UICC TNM分類に従い、病期分類を行った。TNM factorを用い、Cox比例ハザードモデルとbootstrap法によって、癌特異生存率を予測するノモグラムを作成した。ノモグラムの検証にはconcordance indexの算出とcalbrationを行った。

結果

Overallの1,3,5年生存率は95.2, 92.0, 89.9%であった。Cox比例ハザードモデルでは、TNM factorはそれぞれ有意な予後予測因子であった。TNM factorを用いて作成したノモグラムは1,3,5年の癌特異生存率において良好なcalbration plotsが得られ、concordance index も5年の癌特異生存率において0.81と良好であった。

結論

腎細胞癌の手術の適応のある患者に対し、術前にインフォームドコンセントを得る際、このノモグラムは有用であると考えられる。このノモグラムの予測精度に関しては、他施設での症例を用いた検証も必要であると考えられた。

文責 金尾健人

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.4

Kunimitsu Kanai, Eiji Kikuchi, Takashi Ohigashi, Akira Miyajima, Ken Nakagawa, Jun Nakashima, and Mototsugu Oya: Gemcitabine and paclitaxel chemotherapy for advanced urothelial carcinoma in patients who have received prior cisplatin-based chemotherapy. Int J Clil Oncol. 13 (6), 510-514, 2008.

要約

目的

転移を有する進行性尿路上皮癌患者でM-VAC化学療法の無効例に対するsecond-lineとしてのgemcitabine・paclitaxel療法(GP療法)の治療成績を検討した。

方法

対象は20例(男:女=17:3)、GP療法開始時の平均年齢は62.9歳(45〜81歳)、原発臓器は腎盂・尿管が8例、膀胱が11例、尿道が1例であった。化学療法のregimenはpaclitaxel;150mg/m2、gemcitabine;2500mg/m2を同日に点滴静注し、これを2〜3週間毎に施行とし、2〜3コース施行後に病変の評価を行った。

結果

GP投与回数は平均7.7回(2〜22回)、20例中CR:1例、PR:5例、SD:7例、PD:7例であり、奏効率は30%(95%CI, 10-50%)であった。GP奏効期間は平均4.5ヶ月(1〜9ヶ月)、生存期間の中央値は11.5ヶ月(2-22ヶ月)で、1年生存率は35%(95%CI, 16-55%)であった。転移部位別の奏効率として所属リンパ節転移(75%)、肝転移(67%)は高かったが、骨転移は低かった(11%)。副作用としてG-CSFの使用を必要とした白血球数減少は3例(15%)、輸血を必要とした貧血が1例(5%)に認められたが、重度の神経障害、関節痛は認めず、副作用による投与中止例も認めなかった。GP療法奏効例とM-VAC奏効例との間には有意な関連が認められた。またGP療法の施行回数が多いほど長期生存の可能性が高くなる傾向が認められており、維持療法の有効性が示唆された。

結論

GP療法は外来での治療も可能であり、second-lineの化学療法として有用であることが示唆された。

文責 金井邦光

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.3

Expression of Heparanase in Renal Cell Carcinomas: Implications for Tumor Invasion and Prognosis.
Mikami S, Oya M, Shimoda M, Mizuno R, Ishida M, Kosaka T, Mukai M, Nakajima M, Okada Y.
Clin Cancer Res. 2008; 14 (19): 6055 - 6061.

抄録要約

目的

癌の遠隔転移は治療を困難にする主要な原因であり、癌が遠隔転移をするためには血管の基底膜を通過する必要がある。ヘパラナーゼは基底膜の主要な構成要素であるヘパラン硫酸を分解する唯一の酵素であり、多くの悪性腫瘍においてヘパラナーゼ活性が浸潤、転移等の悪性度と相関することが報告されている。腎細胞癌におけるヘパラナーゼ発現を調べ、臨床病理学的因子および予後との相関を検討し、腎癌の悪性度とヘパラナーゼの関連を解明することが本研究の目的である。

対象と方法

ヒト腎細胞癌組織におけるヘパラナーゼmRNA発現をreal-time PCR法によって調べた。ヘパラナーゼ蛋白発現は免疫組織学的に検討した。腎細胞癌の基底膜浸潤におけるヘパラナーゼの役割を解明するため、siRNAによってヒト腎細胞癌由来の細胞株786-O, Caki-2のヘパラナーゼ発現を抑制し、基底膜の構成要素(マトリゲル)をコーティングした膜上での浸潤能の変化を検討した。

結果

最も頻度の高い腎細胞癌である淡明細胞癌においてヘパラナーゼが高発現しており、非淡明細胞癌(乳頭癌、嫌色素細胞癌)ではヘパラナーゼ発現が低かった。ヘパラナーゼの発現レベルは原発巣の進展度、遠隔転移、組織学的異型度等の悪性度と相関していた。siRNAによるヘパラナーゼ発現の抑制によってマトリゲル上での786-O, Caki-2の浸潤能が著明に低下することが判明した。さらに、ヘパラナーゼが高発現している症例は低発現例に比べ予後不良であった。

結論
腎細胞癌の浸潤・転移においてヘパラナーゼが重要な役割を果たしていることが判明した。そのため、siRNA等によってヘパラナーゼ活性を特異的に抑制することが腎細胞癌患者の有効な治療法の開発につながることが示唆された。

文責 三上修治

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.2

The novel NF-κB activation inhibitor DHMEQ suppresses anti-thy1.1 induced glomerulonephritis in rats.

Takeo Kosaka, Akira Miyajima, Eiji Kikuchi, Yutaka Horiguchi, Kazuo Umezawa, Takashi Ohigashi, Jun Nakashima, Tomohiko Asano, Mototsugu Oya

Nephron Exp Nephrol. 2008 Aug 6;110(1):e17-e24

抄録要約

NF-κBは各種の炎症性腎疾患において活性化され、原因となる転写因子であるので、治療標的となりうる。我々はラットに抗Thy-1抗体を用いて、急性腎炎(Thy-1腎炎)を誘導し、新規に合成されたNF-κB活性抑制剤であるDHMEQを使用して、その投与効果について検討した。

効果の検討はPAS染色, Masson染色、免疫組織化学(PCNA, fibronectin, TUNEL、CD45)を用いて検討した。NF-κBの活性はゲルシフトアッセイ(EMSA)で検討した。

Thy-1腎炎誘導後の7日目の腎臓の蛋白抽出物を用いた組織では、DHMEQ投与群ではNF-κBの活性は抑制されていた。明らかな副作用は認められなかった。

DHMEQ投与群では蛋白尿は有意に抑制され、クレアチニンクリアランスは保たれ、腎機能は有意に温存されていた。組織学的評価では、DHMEQ投与群では半月体の形成、メサンギウム領域の拡大、間質の線維化は有意に抑制されていた。糸球体ならびに尿細管領域における、増殖、アポトーシスに対しては、それぞれPCNA、TUNELを指標としたが、DHMEQ投与群では両領域において、PCNA陽性細胞は有意に少なく、TUNEL陽性細胞数は有意に高かった。

DHMEQによりNF-κB活性を抑制することで、明らかな副作用なく、Thy-1腎炎による炎症反応を軽減しており、急性腎炎における、臨床応用の可能性が示唆された。

文責 小坂威雄

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Reduced acetylation of histone h3 in renal cell carcinoma: a potential target of histone deacetylase inhibitors: Kent Kanao, Shuji Mikami, Ryuichi Mizuno, Toshiaki Shinojima, Masaru Murai, Mototsugu Oya. J Urol. 2008 Sep;180(3):1131-6

要旨

目的

近年ヒストンのアセチル化、脱アセチル化がクロマチン構造の変化を介して、細胞の転写制御やがん化に重要な役割を果たしていることが明らかになった。本研究ではヒト腎癌組織におけるヒストンのアセチル化を評価し、さらにヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の腎癌に対する効果を検討した。

対象と方法

ヒト腎癌組織を用い、ヒストンH3のアセチル化をウエスタンブロット法及び免疫組織化学染色によって正常腎組織と比較した。さらにヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(Depsipeptide)の、4種の腎癌細胞株(Caki-1, ACHN, 769P and 786O)に対する抗腫瘍効果をMTT アッセイやフローサイトメトリーで評価した。さらにDepsipeptideの アセチル化ヒストンH3, p21, Bcl-2のリン酸化に対する効果にも検討を加えた。

結果

ヒト腎癌組織では85.0%において、ヒストンH3の脱アセチル化を認めた。これらは核異型度及び臨床病期と相関し、低分化で進行した腎癌ほど強い脱アセチル化を認めた。また、Depsipeptideは4種の腎癌細胞株において時間依存性、濃度依存性に抗腫瘍効果を示し、Caki-1, ACHN, 786Oに対してはApoptosisを、 769P に対してはG2 cell cycle arrestを誘導した。さらにDepsipeptideはアセチル化ヒストンH3の発現を増加させ、同時にp21の発現とBcl-2のリン酸化を誘導した。

結論

本研究により、多くのヒト腎癌組織ではヒストンH3が脱アセチル化されていることが明らかとなった。さらにヒストン脱アセチル化酵素阻害剤によるヒストンのアセチル化は腎癌治療の分子標的となり得る可能性が示唆された。

近年注目されているエピジェネティクスの中からヒストンのアセチル化が腎癌の分子標的になり得るかについての研究である。新規のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDAC inhibitor)も開発されており、さらにヒストンやDNAのメチル化といった他のエピジェネティクスとの関連、DNAメチル阻害剤との併用など、今後も研究が進む分野であると考えられる。

文責 金尾健人

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慶應大学医学部泌尿器科教室からの論文紹介 NO.1

Hideaki Ide, Eiji Kikuchi, Akira Miyajima, Ken Nakagawa, Takashi Ohigashi, Jun Nakashima, Mototsugu Oya: The predictors of local recurrence after radical cystectomy in patients with invasive bladder cancer. Jpn J Clin Oncol, 38(5), 360-364, 2008

要旨

目的

浸潤性膀胱癌に対する膀胱全摘後の局所再発と遠隔転移、疾患特異生存の関連性、
及び局所再発における予測因子を解析する事を目的とした。

対象と方法

1987年から2003年の間に当院において浸潤性膀胱癌に対し、膀胱全摘除術を施行した146例を対象とした。我々は、膀胱全摘後の局所再発と遠隔転移、疾患特異生存の関連性、及び局所再発における予測因子を統計学的に解析し、検討を行った。

結果

膀胱全摘後,26例(17.8%,)に局所再発を術後平均10ヵ月(1〜73ヶ月)後に認めた。局所再発は、郭清されたリンパ節数と同様、遠隔転移における独立した予測因子であった。2年及び5年非遠隔転移生存率は、局所再発を認めていない群において86.7%及び76.5%である一方、局所再発を認めた群では26.5%及び0%であった。又、局所再発の有無及びgradeが疾患生存における独立した予測因子であり、2年及び5年疾患特異生存率は、局所再発を認めていない群において93.5%及び88.3%である一方、局所再発を認めた群では55.1%及び35.4%であった。又、腺癌成分の有無、リンパ節転移の有無および郭清されたリンパ節数が局所再発における独立した予測因子であった。

結論

膀胱全摘後において局所再発は、遠隔転移及び疾患特異生存における独立した予測因子であった。また、上で述べた危険因子を有する患者において、広範リンパ節郭清及び術後補助化学療法も検討する必要性が示唆された。

浸潤性膀胱癌に対する膀胱全摘除術後の生存、転移における予後因子の報告は、比較的多数認められるが、局所再発と転移、生存との関連を検討した上で、局所再発における予測因子の解析を行っている報告は非常に少ない。そこで今回我々は、当院において1987年から2003年に膀胱全摘除術を施行した146例を集計し、局所再発を中心に統計学的解析を行い、検討を行った。本報告において、局所再発は転移、生存の独立した予測因子であり、腺癌成分の有無、リンパ節転移の有無および郭清されたリンパ節数が局所再発における独立した危険因子であった。従って、膀胱全摘除術後の局所制御は非常に重要であり、上記の危険因子を有する患者において、広範リンパ節郭清及び術後補助化学療法等も検討する必要性が示唆された。

文責 井手広樹

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Koshiro Nishimoto, Jun Nakashima, Akinori Hashiguchi, Eiji Kikuchi, Akira Miyajima, Ken Nakagawa, Takashi Ohigashi, Mototsugu Oya, Masaru Murai: Prediction of extraprostatic extension by prostate specific antigen velocity, endorectal MRI, and biopsy Gleason score in clinically localized prostate cancer. Int J Urol. 2008, 15(6), 520-3

要旨

目的

根治的前立腺摘除術が施行された症例における術前PSA velocityの臨床的意義について検討した。

対象と方法

当院において根治的前立腺摘除術を施行した症例のうち、術前にPSAが6ヵ月以上の間隔で複数回測定され、術前補助内分泌療法が施行されなかった103例を対象とした。年齢は平均66.4 ±5.3歳(51歳〜74歳)で、術前PSA velocityを算出し病理学的病期との関連性を検討した。

結果

pT2は64例でありpT3は39例であった。pT3におけるPSA, PSAV, PSA densityはそれぞれ11.758±1.284 ng/ml, 3.197±0.655 ng/ml/year, 0.415±0.051であり、pT2のそれら (8.375±0.448 ng/ml, 0.962±0.213ng/ml/year, 0.239±0.016)に比べ有意に高値を示した。また臨床病期ならびに生検のGleason scoreと病理学的病期の間に有意な相関関係が認められた。Logistic回帰分析を用いた多変量解析ではpT3の予測においてPSA velocity、臨床病期、生検のGleason scoreが有意な独立因子であり、これらの因子を用いて病理学的病期の予測曲線を作成した。

結論

根治的前立腺摘除術が施行された症例においてPSA velocityは臨床病期、生検のGleason scoreとともに病理学的病期の予測に重要な因子であることが示唆された。

前立腺癌における生検病理(Gleason score)はPSA関連マーカーおよびMRI所見と組み合わせることにより、精度の高い病理学的病期の予測が可能となることを報告し以前報告した(西本 他、泌尿器外科 2007)、今回はさらにはPSA velocity (PSAの1年あたりの上昇率)とMRI所見、生検病理が病理学的病期予測に重要な因子でることを確認し、それらの因子を用いて、病理学的病期予測ノモグラムを作成し報告した。

文責 西本紘嗣郎

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